VWのEV戦略…車両開発からグリッド設計、エネルギー需給マネジメントまで

自動車 ビジネス 企業動向
VW電気駆動担当グループ執行役員 Dr.ルドルフ・クレープス氏
VW電気駆動担当グループ執行役員 Dr.ルドルフ・クレープス氏 全 5 枚 拡大写真

『ゴルフ ブルーeモーション』を用いた国際的な体験走行ツアーイベントを、この春から西ヨーロッパ8か国および日本で開始したフォルクスワーゲン(VW)は30日、ドイツ本国より電気駆動を統括するルドルフ・クレープス氏を日本に招き、同社のEモビリティ戦略を紹介した。

既存パワートレインの限界が電動化を推し進める

プレゼンテーションは「なぜエレクトリックモビリティなのか?」という疑問の答えからスタートした。その理由にクレープス氏は「気象変動」「大都市におけるスモッグと騒音」「有限な化石燃料」「世界的な規制の強化」を挙げ、それに答えるためには「いわば1リットルの燃料で100kmを走るようにならないといけないこと。既存のパワートレインでは無理があると誰もが思うでしょう。ですから従来と違うソリューションを考えないといけません」という。

そのためにVWは駆動システムの電動化を進める。その行程は「マイクロハイブリッド」にはじまり、「マイルドハイブリッド」「フルハイブリッド(HEV)」「プラグイン・ハイブリッド(PHEV)」「レンジエクステンダー(RE BEV)」「バッテリー・エレクトリック(BEV)」「燃料電池(FCEV)」へと続く。

そして電動化はコンパクトカーからハイパフォーマンスカー、SUVまですべてのクラスで実施される。そして、具体例として2013年夏の「VW e-up!」と、同年内の「ゴルフ Blue-e-Motion」の投入計画を明かしたのだ。

◆次期ゴルフに採用される新プラットフォーム

続いて、電動化を推し進めるための課題と対応策を提示。特に重要なモビリティコンセプトとして新プラットフォームである「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」が説明された。これは1つのプラットフォームでEVやガソリンエンジンなどさまざまなパワートレーンに対応する車両設計概念で、次期のゴルフからこのMQBが導入されるという。

さらに、クルマ側だけでなくインフラの整備やオンラインモバイルサービスのバックアップも必要だとクレープス氏は語る。そして、「インテリジェントな包括的エネルギーシステム」の考えも提示。いわゆるスマート・グリッドの一種とであり、発電所によるグリッド電力と風力発電などのグリーン電力、VW独自のコジェネ熱電供給システム「CHP(Eco Blue)」を組み合わせた、電力供給の安定化を狙ったものだ。

◆都市単位のグリッド設計も視野に入れる

「以前はクルマを開発して売るだけで良かったんです。ですが将来はエネルギーも考えなければいけません」とクレープス氏は指摘する。

最後にクレープス氏は「化石燃料は将来的にはバイオ燃料と交換してゆくでしょう。従来型の内燃機関にも明るい未来があるのです」と主張する。そのためVWは、内燃機関のテクノロジーの改善も続けるという。また、車両の電動化の先には、スマート・グリッドがあり、それが化石燃料と再生可能エネルギーがミックス状態になっている発電分野の課題にも応えることになるはずだとプレゼンを締めくくった。

《鈴木ケンイチ》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. メルセデスベンツの主力SUV『GLC』、新型を9月に世界初公開へ
  2. 三菱『パジェロ』7年ぶり日本復活か!? 日産 パトロール 派生モデルの可能性も
  3. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  4. カワサキ『Ninja ZX-25RR』を日本初導入、価格は105万2700円 スタンダード版「25R」は廃止
  5. その名の通り1000馬力! 新型スーパーカー『ブラバス1000』発表、AMG GTのPHEVをさらに強化
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る