【プリウスPHV 3か月検証】H2Vマネージャーで家庭電力とPHV充電を可視化

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H2Vマネージャーのスマートフォンアプリ。消費電力量が確認できる
H2Vマネージャーのスマートフォンアプリ。消費電力量が確認できる 全 16 枚 拡大写真

トヨタ自動車が2012年1月末に発売したプラグインハイブリッドカー『プリウスPHV』。エンジンを搭載し、バッテリー残量が少なくなった後は普通のハイブリッドカーとして走行可能なため、EVについて回るバッテリー切れへの懸念はない。が、もう一つの気がかりなポイントは、家庭での充電。プリウスPHVを充電する際に必要な電流は12アンペアと結構大きい。100Vなら1200W、200Vなら2400Wと、ダイナミックに電気を使う。契約アンペア数によっては、ブレーカーが頻繁に落ちかねない。

その問題を解決するために、トヨタの関連会社であるトヨタメディアサービスがオプション販売しているのがプラグインハイブリッド、EVの充電をコントロールする「H2Vマネージャー」だ。H2Vマネージャーは家庭の分電盤近くに設置する「H2Vコントローラー」と、この情報を家庭のPCやブラウザ付きのテレビに表示したり、インターネットを経由して「トヨタスマートセンター」に情報を送る「H2Vゲートウェイ」の2ユニットからなる。税込5万2290円でトヨタディーラー、トヨタホームを介して販売されている。

家電製品が使うアンペア数が増え、ブレーカーがピンチになると、自動的にクルマへの充電を中断。使用量が下がると再び充電する、という「ピークカット機能」を持つ。また、クルマ、家庭の電力使用量や電気料金の概算など、トヨタスマートセンターに蓄積された様々な情報もインターネットを介して表示可能。家とクルマ、トータルでの電気の使われ方が可視化されているのも特徴だ。

●H2Vマネージャー導入の効果は

本サイトの三浦和也編集長は、プリウスPHVを購入した際に、H2Vマネージャーも導入した。4人家族の一戸建て住まいだが、電力会社との契約は40A。普段でも季節によっては月に数回、エアコン、電子レンジやIH電磁調理器と洗濯機や掃除機などいくつかを同時に使用するとブレーカーが落ちてしまう。プリウスPHVの充電が加わるとすると、さらに心もとなく感じられる契約アンペア数だ。果たしてH2Vマネージャー導入の効果はいかほどのものだったのか。

「プリウスPHVに乗り始めてから3か月が経ちましたが、H2Vマネージャーのピークカットは有効に機能していますね。プラグインハイブリッドを導入するには50Aもしくは従量電灯Bの上限60Aまで必要かなと思いましたが、今のところ40Aで問題はなく、充電開始によるブレーカーダウンは一度もありません」(三浦)

このH2Vマネージャー、つい最近ファームウェアがバージョンアップされた。変更点はピークカットの電力使用割合を1%刻みで自由に設定できるようになったこと。

「これまでは、クルマと家、トータルでの電流が40Aの90%を超えるとピークカットすると固定されていたのですが、それだと冬場に子供部屋で電気を使うオイルヒーターをつけているときは、ぎりぎり90%を越えてしまい充電が止まってしまっていました。家族全員が寝静まった深夜でも子供部屋で暖房をつけているとずっとピークカットが機能してしまい充電が開始されなかったり、50Aへの変更(370円電気契約料アップ)を覚悟したこともありました。ところが今回のファームウェアの更新で、しきい値をカット100%に設定できるようになった。我家の場合、10%の違いが大きく、充電中断は結構減るのではないかと期待しています」(三浦)

プラグインハイブリッドカーは充電が終わっていなくても短距離ならEV走行可能。まったく充電していなくても、普通のハイブリッドカーとして走ることができる。が、「プラグインハイブリッドカーを所有すると、ぜひフル充電して走りたいという気持ちが強くなるんですね。3時間経って、余裕で充電完了かなと思っていたらピークカットで終わっていなかったりするとすごく残念に感じる」(三浦)というユーザー心理があるらしい。実際、「EVやプラグインハイブリッドカーのユーザーは、急速充電以上に満充電志向が強い」(EV・プラグインハイブリッドカー開発エンジニア)という。

プラグインハイブリッドカーやEVを住宅に無理なく導入することを第一目的としたH2Vマネージャーだが、それ以外にも楽しめる大きなファクターがあると三浦は語る。

●可視化によりエネルギーの効率利用を意識

「H2Vマネージャーで得られたデータは専用ルーターと通信することで電気の利用状況がリアルタイムでわかる。またネットにつながっている場合はトヨタスマートセンターに蓄積され、過去の履歴をいろいろな形でスマートフォンで見ることができる。実際に使ってみると、これらの機能がとても面白かった」(三浦)

見られる項目は多い。瞬間消費電力をモニタリングできるのはもちろん、電力使用量、電気代の概算、CO2排出量について、日量、当月の累計、前月と、いろいろなアプローチで表示する。

「面白いのは数字だけではありません。たとえばスマホの画面のグラフ。棒グラフは黄色の頂点がクルマと住宅の合算消費量。青はそのうちプリウスPHVが使った分です。折れ線グラフのほうは、黄色が住宅の、青色がプリウスPHVの消費電力量を表しています。6月2日の例で見ると、プリウスPHVの充電が家で電気を大量に使う夕方とかち合って、しょっちゅうピークカットされているのが見て取れます。充電完了までにピークカットが挟まり、6時間ほどかかっているのがわかります。こういったデータが可視化されるのは、思った以上に楽しい」(三浦)

H2Vマネージャーが設置された当初は、住宅の消費電力のリアルタイムデータ表示に子供が相当の関心を見せたという。

「家の電気を全部消しても、0.5kWほど電力が消費されていたんですね。冷蔵庫や家電の待機電力ってかなり大きいんだなと。そこで子供たちは電気をつけたり消したりして、照明でも結構かわるものなんだねー、LEDだとほとんど変わらないねーなどと、いろいろと省エネルギーを試していました」

H2Vマネージャーは、現在はトヨタスマートセンターとの通信を除けば、制御自体はスタンドアロンだ。が、近い将来、たとえば夏季に電力不足気味になった際に、ピークカットに同意したユーザーに対してセンター側からコマンドを出してPHVやEVへの充電を一時中断するといったスマートグリッド的な運用もできるようになる見通しだという。このシステムが将来どういうものに成長していくか、興味深い。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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