まるで巨大なおもちゃ箱…大人がワクワクする特撮博物館

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特撮短編映画「巨神兵東京に現わる」は企画展のためにスタジオジブリが制作した。
特撮短編映画「巨神兵東京に現わる」は企画展のためにスタジオジブリが制作した。 全 8 枚 拡大写真

東京都現代美術館で開催されている「企画展特撮博物館」に訪れた来場者は、まず、思わず声を上げるに違いない。会場入って直ぐの展示室には、所狭しと往年の特撮番組のミニチュア模型が並べられているからだ。
少し大人にとってはテレビの中で見た懐かしいメカや風景、子どもたちにとっては見たこともない精巧で巨大なおもちゃに映るだろう。そこには新しいおもちゃに出会った時のようなわくわく感が満ち溢れている。

特撮映画で使われてきたミニチュア模型は、今回の「館長 庵野秀明 特撮博物館 –ミニチュアで見る昭和平成の技-」の目玉のひとつだ。それを展示の一番に持ってきたことに、今回の企画展のコンセプトが凝縮されている。
第1展示室からは、「まず、ここで驚かせてやろう」という企画者のイタズラ心が含まれた熱い想いが伝わる。つまり、これまであまり顧みられることのなかった特撮技術の素晴らしさと楽しさを、まず知って欲しいとの考えだ。

そんな企画に携わったひとたちの想い=ワクワク感は、ほかにも会場の至るところで見られる。例えば、展示品の選択や配置や並び。特撮ファンであれば思わず納得する一方で、初めての人には造形的な美しさを伝える。
それは特撮撮影所の美術倉庫の再現に、よく表れている。特撮制作の現場の雰囲気を伝える同時に、その文化が保ってきた現場の息吹、美しさに、訪れるものは息を飲む。
そして、今回の企画をさらに引き立てているのは、庵野秀明さん(展覧会の企画においては“館長”とされている)による展示品の説明だ。それらはそれぞれの由来や解説だけでなく、ちょっとした思い出なども盛り込んだショートエッセイのような体裁だ。作品を説明する場である以上に、想いを伝える役割がより大きく感じられる。

ただし展覧会は、楽しい側面とは裏腹の負の側面もある。もともと今回の企画は“特撮”という文化が失われてしまう庵野秀明さんの危機感が発端になっている。
1950年代から2000年代初頭まで特撮を担ってきたミニチュアやステージは、現在、急速にCGやVFXというコンピューター上の映像処理技術に引き継がれている。資金も手間もかかるミニチュアなどは急速に姿を消しつつある。

今回の展覧会の大きな目玉が『風の谷のナウシカ』から引用された巨神兵の特撮短編映画「巨神兵東京に現わる」だったことには、偶然以上のものを感じてしまう。マンガ『風の谷のナウシカ』のラストで、人間たちは滅びの道を歩んでいくことが示される。それは映像技術として消えていかざる得ない特撮の姿に重ならないだろうか。
ナウシカはこれに対して、それが滅びの道であっても、その滅びの日まで精一杯生き続けるのだと主張する。失われていくものが、価値がないわけでは決してない。むしろ、短い期間に咲き誇った花だからこそ美しいとも言える。
特撮博物館は特撮の文化の素晴らしさを提示する。そうすることで、そうした美しい記憶を失わずに残しておきたいとの強い意志に支えられ、実現しているのだ。
[数土直志]

「館長 庵野秀明 特撮博物館」
ミニチュアで見る昭和平成の技
http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/index.html

開催期間: 2012年7月10日(火)~10月8日(月・祝)
開催場所: 東京都現代美術館 企画展示室1F・B2F
主催: 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館/日本テレビ放送網/マンマユート団企画制作協力: スタジオジブリ/三鷹の森ジブリ美術館
館長: 庵野秀明
副館長: 樋口真嗣
展示コーディネート: 原口智生、西村祐次

まるで巨大なおもちゃ箱 大人がワクワクする特撮博物館@東京都現代美術館

《animeanime》

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