【インタビュー】「ロシア成功の条件はそろった」マツダ 中峯 勇二 専務執行役員

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マツダ 中峯 勇二 専務執行役員
マツダ 中峯 勇二 専務執行役員 全 12 枚 拡大写真

『マツダ6』(日本名『アテンザ』)新型のワールドプレミアをモスクワモーターショーで行なったマツダ。ロシア市場で確かな存在感を放ち、手応えを感じているというマツダの中峯勇二専務執行役員に、ロシア市場に対するこれまでのアプローチと今後の戦略を聞いた。

■マツダ6の主要市場であるロシアでワールドプレミア

---:このマツダブースで先ほど行われたモスクワモーターショー12における『マツダ6』のローンチは大成功だったのでは。

中峯氏(以下:中峯):メディアの評価も高く、プレスカンファレンスにも人が集まりました。また、今回のモスクワモーターショー12には社長の山内も参加するということで、かなり力の入った発表になりました。

---:マツダ6のフルモデルチェンジのワールドプレミアをロシアで行なった理由をお聞かせください。

中峯:これまでは欧州でもパリやフランクフルト、ジュネーブといったところがメインになっていましたが、(通貨危機で伸び悩むユーロ圏の)市場環境の一方で、ロシア市場は非常に力強く伸びています。もうひとつの理由は、マツダにとってロシア市場は国ごとにみたときに世界でも有数の販売規模を持っているということです。我々にとっては非常に重要な市場です。

---:マツダの国ごとの販売はどのようなところが大きいのでしょうか。

中峯:まずはアメリカですね。次に中国、そして日本。続いてオーストラリア、カナダ。これらの市場に次ぐ大きな市場としてタイやロシアがあります。ロシア市場ではマツダ6の存在感は非常に大きいです。つまりマツダ6の属するセグメントにおけるマツダ6のシェアが大きいということです。したがってロシア市場はマツダ6の主要な市場となっています。マツダ6にとっては、新型のワールドプレミアをロシアで行なうことは最適であると判断した次第です。

---:ロシア市場はマツダとって台数的に意味があるということですが、欧州市場とロシア市場というのはマツダにとって同じものでしょうか、それとも違うものなのでしょうか。

中峯:過去はロシアは欧州の一部として、事業を展開していました。今はユーロ危機もありますので、欧州の中でどの市場がメインになり得るのかと、戦略を練り直しました。その結果、ドイツ、UK、ロシアといった市場に注力をしていこうということになりました。ロシアは欧州の一部なのですが、市場をよく見ると特徴があります。LADAブランドを展開するアフトワズなどの国内メーカーがありますし、SUVを中心とした大きなクルマに需要があります。市場の特性が欧州の他の市場とは少し違うということです。ロシアについては欧州の一部と考えるよりも、ロシアに合った対応、施策を打っていくことが重要であると考えます。

■ロシア市場では、「販売」と「生産」の組み合わせ

---:新型マツダ6は輸入になりますか。

中峯:はじめは輸入です。2012年10月にはソラーズ社との合弁でウラジオストックにて生産を行なう予定で、最初は『CX-5』、2013年にはマツダ6の生産を計画しています。

---:ロシアが8月にWTOに入ったことによって関税は下がりますね。

中峯:EUという大きな地域でみると下がりますが、逆に現地ローカルでは、輸入車関税があがるということもありまして、現地生産することが税制面での負担を軽減します。ロシアがWTOに加盟したことによってEU圏の完成車の輸入は易しくなるという期待感はあると思います。そうはいっても、自国の自動車産業の育成はロシアの課題としてありますから、完成車をEU圏から輸入するだけでは、ロシアではビジネスは成り立たないだろうと思います。ソラーズ社との合弁はそうしたところを見越したものです。

---:マツダがロシア市場にコミットしていくということは、ただ製品をロシアで売るということではなく、ロシアで車を生産するということも含まれていると。

中峯:売ることと作ることはセットです。ロシアでは我々マツダのブランド戦略は非常にうまくいっていると自負しています。スタイリッシュなデザイン、走る喜び、そうしたマツダの意図がうまくユーザーに伝わっています。それは何故マツダ車を買うかということに関する調査結果からも明らかになっています。スタイル、走りという指標がマツダブランドは高いのです。我々が行なってきたマーケティングが結果を出しているということです。そして今後、ローカルで生産を始めると、コストや税制の面で有利になります。

■4年後には10万台を

---:ロシア市場での販売目標は。

中峯:リーマンショックの前は、ロシア市場でマツダは年間約7万台の販売規模を持っていました。ブランドが非常に受け入れられて急成長していました。リーマンショックで縮小してしまい、今は再び販売規模の拡大が進んでいます。2011年は約4万台です。決算期ベースでみると、2012年3月期は4万4000台売っています。今年は5万台に向けて、4年後には倍増の10万台規模まで、拡大できればと考えています。我々はロシア市場に対しては後発組です。最初からブランド戦略やマーケティング戦略を持ってロシア市場に臨んでいます。あとはプロダクト、というところでCX-5とマツダ6があり、現地生産も控えていますので、これでビジネスの成長は見込めるものと信じています。

---:つまり成功の条件は全部そろっていると。

中峯:そうですね。条件はそろっていますので、期待をしています。ブランドの強さはロシアにあるマツダファンクラブにも現れています。このファンクラブは自主的に活動しているもので、モータショーをはじめとするイベントなどにボランティアでお手伝いいただいたりすることもあります。非常にユニークなクラブで、この参加者が我々のターゲットユーザーである若い方々であることも勇気づけられます。

---:マツダ6は世界で販売されるクルマですが、このクルマの使命は。

中峯:2002年から世界中で一貫したブランド戦略「ZOOM-ZOOM」を展開しています。そこからさらにステップアップしようということで、テクノロジーのテーマに「SKYACTIV」を設け、デザインテーマには「魂動(こどう)」を設定しました。SKYACTIV、魂動がマツダのクルマづくりの両輪となり、CX-5が量産車第一号、今回のマツダ6が第二号として誕生いたしました。

先ほど述べた、ロシアでのマツダのブランドイメージと、現地生産によるメリット、そして新世代コンセプトの商品であるCX-5とマツダ6。この3つのコンビネーションで、我々はロシア市場で次の段階にあがっていけると、自信を持っています。

---:なるほど、3つの条件がそろったモスクワで、マツダ6がワールドプレミアを行う必然がよくわかりました。

■ところで、アテンザにディーゼルは存在する!?

---:ここロシアでは当面SKYACTIV-Gのみ、ドイツなどではSKYACTIV-Dパワートレインも用意するようですが、日本でのアテンザ(マツダ6)はSKYACTIV-GとSKYACTIV-Dの両方を用意することになりますか。

中峯:市場によって分けることになります。Gに需要がある地域とDに需要がある地域を見極めて展開することになるでしょう。日本での展開はまだ話せませんが、近々お話するタイミングがあると思います。

(インタビューアー:三浦和也、文責:土屋篤司)

《レスポンス編集部》

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