【日産 NMC 試乗】超小型モビリティには新時代の移動体として一定以上の意義…松下宏

試乗記 国産車
日産・ニューモビリティ・コンセプト(NMC)
日産・ニューモビリティ・コンセプト(NMC) 全 9 枚 拡大写真

超小型が話題になっている。国土交通省が近未来の新しい移動体として提唱し、自動車メーカーなど各社が研究・開発や実証実験を進めているものだ。

日本の社会は多くの課題を抱えているが、今は少子高齢化社会の到来に伴う移動制約・外出機会の減少などが課題として顕在化しつつあり、それに対応する新しいモビリティを模索するものとして考えられているのが超小型モビリティだ。

国土交通省では、軽自動車と原付きバイクの中間くらいの位置にある移動体で、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度のクルマを、超小型モビリティとして定義している。

国土交通省が提唱したこともあり、昨年の東京モーターショーでは、超小型モビリティに相当するようなクルマが各社から出品されていた。

トヨタ車体の『コムス』、ホンダの『マイクロコミューター・コンセプト』、ダイハツの『ピコ』、スズキの『Q-コンセプト』などがそれ。このうちコムスは既に市販されている。

今回試乗したのは日産の『ニューモビリティ・コンセプト(NMC)』で、ルノーとのアライアンスの中で開発され、ルノーは『ツィギー』の名前で昨年からヨーロッパで市販を始めている。

日本でも日産が横浜元町地区などで各地で実証実験を始めており、そのコンセプトカーに試乗というか、体験をする機会があった。

NMCの外観デザインは写真の通り。今回の試乗車にはドアが設けられていなかったが、はね上げ式のドアを備えたモデルもある。

全長×全幅×全高は2340ミリ×1190ミリ×1450ミリとコンパクトで、その気になればクルマ1台分のスペースに横にして4台を並べておけるくらいのコンパクトさだ。乗車定員は2名、タンデム(前後並び)で大人2名が乗れる。

電気モーターは後席下、後輪の車軸前のミッドシップに搭載され、リチウムイオン電池はシートに搭載される。電池の搭載量などの詳細は明らかにされていないが、モーターの出力は7キロワットで、最高速は時速80キロメートルまで出るという。

充電時間は200ボルト電源を使ってフル充電するのに4時間程度。満充電で100キロメートル程度の走行が可能。コンパクトなクルマなので、充電時間も短く、その割に距離を走れるイメージだ。

タイヤは前後異サイズで、前輪が125/80R13、後輪が145/80R13。後輪用は軽自動車などにも使われているサイズだが、前輪用は専用といった感じ。試乗車に装着されていたタイヤはコンチネンタルのeコンタクトだった。

今回はごく限られたシチュエーションでの試乗だったが、加速の滑らかさと力強さは電気自動車ならではといった印象を受けた。

クルマに乗り込んで、イグニッションキーを長回しするとGOランプが点灯してスタンバイ状態になる。シフトは押しボタンスイッチ式でDとRが用意され、両方を一緒に押すようにするとニュートラルになる。

Dレンジを選んでサイドブレーキを外し、アクセルペダルを踏み込むと、わずかなモーター音を聞かせながらスムーズに加速する。滑らかで気持ちの良い加速だ。

驚いたのは操縦安定性の高さで、スラロームのような走りをしても、ほとんど車体をロールさせることなく安定感の高い走りを実現する。少々荒っぽい動きを試しても、クルマの姿勢が乱れることがなく、走行安定性については見た目から想像する以上に高いレベルにある。

後席にも試乗したが、乗り降りをするにも、乗り込んだ後も前席のシートを両足で挟み込むようにして座るため、やや窮屈で特に快適という感じではなかった。

超小型モビリティが定着するかどうかは、国土交通省の定める規格がどのような形で落ち着くかがまずポイント。国土交通省は、限られた地域において一定の条件下での使用を想定しているため、安全基準などは通常の軽自動車などに比べてやや緩いものにする考えのようだ。

走らせる地域が限定的なものになるほか、性能面でも一定の規格が定められることになるので、取りあえずはその条件に合ったユーザーが使う形になる。

次に課題となるのは価格と保有コストだ。既に発売されているコムスが1人乗りで、70万円前後の価格で販売されている。補助金が7万円受け取れるものの、これではちょっと高めの印象た。70万円もしたのではたくさんの売れ行きは望めないだろう。

また税金や保険料などの保有コストも問題。これが軽自動車に比べて格段に安いイメージにならないと、高齢者ユーザーなどにとって使いにくいものになる。

保有コストなどの課題は時間をかける間に自然に解決していくだろうから、どのようなユーザーとどのような使い方を想定して超小型モビリティの規格を確定させるかが問題だ。それによって普及するかどうかが変わると思う。

今回NMCに乗ってみて、軽自動車でも原付きでもない新しい移動体として、一定以上の存在意義があることが感じられた。

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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