【CEATEC 12】クラリオンのフルデジタルカーオーディオ、その実力は

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詳細な概要が説明されたフルデジタル・カーオーディオシステム「Z8/Z17F」
詳細な概要が説明されたフルデジタル・カーオーディオシステム「Z8/Z17F」 全 15 枚 拡大写真

クラリオンは10月2日、CEATEC JAPAN2012において、すでに9月27日に発表した車載用フルデジタルスピーカー「01DRIVE」シリーズの説明会を開催。かつてない低消費電力の高効率カーオーディオシステム「Z8」「Z17F」の魅力に触れようと多くの報道関係者が集まった。

このシステムの凄いところは、世界で初めて音源からスピーカーまで完全デジタル伝送を実現したことにある。従来は音源がデジタル信号であっても、アンプやスピーカーを経由する中で必ずアナログ信号へD/A変換されるため、この過程で劣化が生じるだけでなく、パワー増幅のための電力の大量消費は避けられなかった。

それに対して今回発表されたフルデジタルシステムでは、音源のデジタル信号を256倍にまでオーバーサンプリングし、11MHzにデジタル変調。それを6chのデジタル信号に変換し、スピーカーのボイスコイルを直接駆動する。ボイスコイルに入力する直前までをデジタル伝送することで、経路上の劣化はほぼゼロとなり、消費電力では1/8に削減、電圧では1/2以下の5V駆動が可能になるという。

フルデジタル化は音質面でもプラスとなり、その意味では幅広いメリットを生み出しているというわけだ。このデジタル変換技術はTrigence SemiconductorのDnote技術によってもったらされたもので、クラリオンは早い段階でこの技術に着目。数年にわたる摺り合わせを経て採用にこぎ着けたのだという。

EVをはじめ、PHVやアイドリングストップ車の普及が進み始めている中、今後は少ない電力でオーディオが駆動できるシステムの開発は必須となるのは確実。クラリオンはそうした流れに先鞭をつけ、低消費電力、低電圧駆動、そして高音質という3つの要素を確立したオーディオシステムへと発展させていく考えだ。

CEATECの会場では、このカーオーディオシステムのデモカーによる試聴会も実施。会場にはつや消しブラックのカッティングシートで全体を覆ったプリウスαをデモカーとして用意。その『劣化ゼロ』の音を一度は聞いてみたいと、会場では順番待ちが恒常的に発生するほどの人気ぶりだった。

デモカーのシステムは、フロント用スピーカーをセットにしたZ8/Z17Fに加えて専用開発されたリアスピーカー・Z17Rを組み合わせたもの。取り付け自体は、純正スピーカーをそのままトレードインしたもので、周囲のデッドニングなど加工はとくに行っていないという。果たしてこの状態でどこまでの音が出せるのか興味津々で臨んだ。

再生してまず感じたのが、クリアでシャッキリ感のあるサウンドであることだ。繊細な高域のきめ細かさはこれまでのアナログとは明らかに異なる印象で、中域の伸びも良好。私が好きな女性ボーカルの一人 Basiaの声を気持ち良く響かせていたのも印象的だった。爪弾くギターの音色にもキレがあり、中高域の速い動きにもキチンと追従できていた。担当者によれば、この高い追従性はデジタル信号をボイスコイルへの直接入力した効果によるものなのだという。

ただ、コントラバスが加わったジャズトリオの演奏になると様子は一変する。低域が暴れはじめ演奏に付いてきてくれない。ベースが完全に別次元で鳴っているかのように聞こえてしまう。人間の可聴範囲であるはずのベースの音が処理範囲を超えているとも思えず、この原因を訊ねると「6chのボイスコイル駆動は車載でパワーを出すのに問題はなく、特性上は低い周波数帯でも問題なく再生は出来ている。明らかにユニットをデッドニングも行わずに“ポン付け”したデメリットが出てしまっている」との回答だった。

当たり前だが、音として放出される段階で出力はアナログ信号となる。限界を超えれば当然歪みも発生する。いくらデジタル伝送して劣化ゼロを生み出したとしても、コーンを効率よく振動させられるインストール技術はこれまでと同じく重要な工程であることに変わりはないのだ。

消費電力は従来のわずか1/8、電圧も1/2以下の5V駆動が可能になるメリットは大きい。しかもハーネスは従来のものがそのまま流用できるメリットもあり、従来システムとのトレードインも容易にできるという。消費電力を少しでも抑えたいEVをはじめPHVやアイドリングストップ車は今後急速に普及することが確実視される中、将来への期待度は極めて高いと言っていいだろう。

《会田肇》

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