SUPER GTのGT500クラスとDTM(ドイツ・ツーリングカー・マスターズ)。日本とドイツをそれぞれ代表するハコ車レースの最高峰カテゴリーが、2014年シーズンからの車両規則の基本的な統一について正式合意に達したことを、10月16日、都内で発表した。
かねてからコスト削減や効率化、それによる参戦メーカー増を目的とした車両規則統一に向けて話し合いを進めていたGT500とDTMが、ついに正式合意。現在GT500にはニッサン、ホンダ、レクサス(トヨタ)の3社が参戦中、一方のDTMもアウディ、メルセデス、BMWと、やはり国産3社による戦いとなっているが、車両規則統一により、相互交流や新規メーカーのダブル参戦といった動きが出ることを両カテゴリーは期待している。それが実現することによって、それぞれが国内で誇る人気を不動のものとし、アジア及び欧州の軸としてさらなる発展を、というのが協調路線採択の主たる理由だ。
この日の会見には日本側からSUPER GTのシリーズ運営団体であるGTAの坂東正明代表、ドイツ側からはDTMのシリーズ運営団体ITRのプレジデント、ハンス・ヴェルナー・アウフレヒト氏、さらにはJAFとDMSB(ドイツのJAFに相当する組織)の関係者が出席。さらには、WEC(世界耐久選手権)の富士戦を戦い終えたアウディのレース部門首脳、ウォルフガング・ウルリッヒ氏らが来賓として参加した。ウルリッヒ氏は「我々アウディのモータースポーツ活動は常に国際的であることを意識している」と語り、日独トップカテゴリーの国際的な協調合意に歓迎の意を表している。
FR車を前提とした共通車両規則であるだけに、気になるのは14年からの実戦投入も噂されるホンダの次期NSX(MR車)のGT500出場の可否だが、これについては大注目車とあって外国人ジャーナリストからも質問が飛んだ。坂東代表は「参戦メーカーの営業戦略等を考慮すれば、生産車とレースカーが“同じ”であることは大切。新規定による共通モノコックを使用したうえで、ミッドシップとしてのGT500出場は可能」との旨を話し、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス、いわゆる性能調整)によって参戦を認める方向である意向を示した。
逆に言えば、モノコックやパーツの共通化が成されるといっても、あくまでGT500はGT500であり、DTMはDTMであり続けると考えるべきだろう。同じ楕円形のボールを使っていてもラグビーとアメフトは異なる競技である、というイメージだ。シリーズ統合とは話が違うことに注意していただきたい。
ただ、こういう展開になった以上、ファン目線で期待したいのは両カテゴリーの交流戦的なレースの実現である。日独精鋭6メーカーのバトルロイヤル、考えただけでもファン垂涎のレースとなりそうだが、いきなりの実現は難しいだろう。だが、アウフレヒト氏も「そういったことが可能になる機会をつくることができた。あとはメーカー次第」と語り、この日を「モータースポーツの歴史において特別な日。未来への大いなるステップだ」とまで話す。そして坂東代表も「いずれ交流戦のようなものも現実となるだろう」と、期待を寄せている。ぜひ、早期実現を願いたいところだ。
コストを削減しつつも競争環境を損なわずに、さらなる発展につなげる。SUPER GTとDTMのさらなる隆盛に期待高まる正式合意会見であった。