【中田徹の沸騰アジア】アジア最後のフロンティア、ミャンマーは開発ブーム、自動車産業の可能性は…

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ミャンマー・ダウェイ位置図
ミャンマー・ダウェイ位置図 全 1 枚 拡大写真

「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマー(ビルマ)。軍事政権から民政に移管されたことをきっかけに米国や中国、日本、タイなどを含む各国が開発競争に乗り出している。地政学的重要性、豊富な天然資源、安価な労働コスト、マーケットとしての将来性、これらの部分に注目が集まるが、自動車という視点からは、何が見えるのか?

■民政移管で開発・投資ブームに

ミャンマーは、インドシナ半島の西側に位置し、タイ、ラオス、中国、インド、バングラデシュと国境を接する。人口は、タイとほぼ同じ規模の6242万人(2011年)。主な産業は、農業や、輸出産品でもある天然ガスなどの地下資源である。1988年のクーデター以降、12年間に渡り軍事政権が続いてきたが(この間の1997年にASEANに正式加盟している)、2010年に総選挙が行われ、2011年には民政による新政権が誕生した。

軍事政権下のミャンマーにおいて、天然ガスなどの地下資源とインド洋へのアクセスの獲得を虎視眈々と狙う中国が開発支援を進めてきた一方、欧米各国などは経済制裁を課してきた。しかし、民政移管を受けて日米欧などが様々な開発プロジェクトに名乗りを挙げているほか、安価な労働力や市場としての将来性などを背景に、製造業や小売業なども現地進出に向けて動き出した。投資ブームが熱を帯び始めている。

■ダウェイ開発に注目、2020年前後には物流拠点に

自動車分野ではいくつかの動きがみられるが、大きなインパクトになるだろうと考えられることと言えば、やはりダウェイ開発ということになる。インド洋に面するダウェイは小さな街だが、ASEANとインドを結ぶ物流ルートの要となるべく、深海港を含む港岸設備や工業団地の開発が進められる予定だ。高炉メーカーが進出する計画もあるこの工業団地には、タイや日本の企業が投資する見通しである。詳細は決まっていないが、2020年前後に稼働する可能性がある。また、ASEAN随一の工業地帯であるタイ首都圏及び沿岸部(南東部)との間で幹線道路の建設も進む計画で、既にタイ側(バンコク首都圏~ミャンマー国境)では完成に近づいている。

タイとインドの間では、日系自動車メーカーの生産車種が重複しており、部品の相互供給が拡大している(タイ拠点はインド事業支援部隊としての性格が強い)。しかし、産業集積が進むバンコクから西に進んでいくと、インド洋まで残り100kmの地点でミャンマーに道を阻まれるため、現状ではインド方面への物流(陸運・海運)を南に大きく迂回させることになっている。高いコスト競争力が問われるインド事業を支える上で、タイとインドの間の物流コストの低減は日系企業にとって大きな課題だが、ダウェイ開発が進み、インドシナ半島からインド南部にかけての大きな経済回廊が完成すれば、物流面を中心に大幅な効率化(競争力向上)が期待される。

■自動車市場としては当面期待薄、生産進出は?

自動車市場としての可能性を考えると、花開くには相当の時間がかかりそうだ。マレーシアの2倍以上の人口を持つミャンマーだが、1人当たりGDPは850ドル程度(2012年)で、四輪車に手が届く水準にはない。最近の投資ブームを背景に賃金水準は急速に上昇しているが、2017年の1人当たりGDPは1104ドルと予測され(IMFによる)、高額な耐久消費財が普及するようになるまでには10年以上の時間が必要と考えられる。パイは小さくないが、開花は当分先となる。

自動車生産拠点としての可能性はどうか?既に一部の自動車メーカー、二輪車メーカーが進出を検討しているとの報道もあるが、車両組立分野への大型投資が進む可能性は小さい。AFTAの下でASEAN域内の関税が2018年までに撤廃される予定であり、現地組立するメリットがあまりないためだ(タイからの輸入車が中心になる見通し)。ただし、低廉な労働力を求める部品メーカーが、タイなどへの供給拠点と位置づけて工場進出する可能性は高く、ASEAN域内での分業・補完体制のなかにミャンマーが組み込まれることになると想定される。

■数十年単位の視点では有望株

現在、「アジア最後のフロンティア」には、電力供給力や道路などの産業・経済インフラが整っていないなどの問題がある。しかし、人口規模や豊富な天然資源、インドとASEANの中央に位置するという地理的優位性から考えると、将来的に極めて大きなプレゼンスを獲得する可能性を秘めている、と言える。経済面から見た場合、10年以上先かもしれないが、アジア・インド洋地域の物流の要衝地として台頭することは確実な情勢だ。アジア自動車産業の雄になれるかは、さておき、ということになるのだけれど。

《中田徹》

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