【CROSS 2013】アプリ開発者が語る、HTML5のいいところ・悪いところ

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スマートフォンCROSS 2013
スマートフォンCROSS 2013 全 4 枚 拡大写真

1月18日、ベルサール新宿グランドで「エンジニアサポート新年会 2013 CROSS」が開催された。本イベントは、Webやマートフォンアプリ開発に関わるエンジニアが集い、様々なセッションを通じて意見交換や交流を促進することを狙いとしている。

このイベントのセミナーセッションにおいて、メイン会場でおこなわれた「スマートフォンCROSS」に参加した。2時間以上におよぶスマートフォンCROSSは、1部と2部に分かれ異なるテーマを議論をおこなった。

1部の登壇者は、ゲームクリエイター/システムアーキテクトの安生真氏(ピクシブ)、スマートフォンアプリ「miil」などを提供しているFrogAppsでCTOの要職にある増井雄一郎氏(Appcelerator)、そして「Yokohama iPhone Developers」から吉田悠一氏(デンソーアイティーラボラトリ)の3名。昨年のCROSS 2012でも顔を合わせた3名だが、2012年を通じてスマートフォン向けのアプリ開発にどのような変化がもたらされたかが語られた。

昨年は、異なるプラットドームでのアプリ開発が話題にのぼり、その解決策としてHTML5の可能性が注目されていたが、今回の議論でもHTML5が議題の中心になった。

◆HTML5の功罪

増井氏によれば、開発の現場でも「『HTML5は使えるんですかね』というのはよく聞かれる」という。増井氏が手がけているスマホアプリのmiilはネイティブでつくっているが、「一部のHTML5化を目論んでいる」とのこと。

2012年9月にFacebookのマーク・ザッカーバーグが「HTML5に投資したのは間違いだった」と放言したことが話題になったが、増井氏はスマホアプリの構築にHTML5を導入する意義は大きいと語る。

「ハードウェアの性能向上により、表示についてはネイティブ並のパフォーマンスが出せるようになったこと、またiOSの場合は(Webベースで作られているため)アップルによる審査の手間を減らせるというのはHTML5のいいところ」(増井氏)。一方で、「たとえばスクロールの慣性をより直感的なものにしようとするとJavaScriptとスタイルシートで仮想的にスクロールさせるルーチンを組む必要があるし、メモリ空間を空けるためにiFrameを駆使するなど、ネイティブで作るよりもスキルを要する」など、一長一短があるという。

◆「なんでもできる」JavaScriptに戸惑いも

吉田氏も、HTML5の普及でJSの機能が拡張されてきていることについて「JSでカメラにアクセスし、典型的なARツールをJSで書く猛者も出てきている。デバイスにブラウザがどんどんアクセスするようになると面白いことになる」と肯定的に捉える反面、「他人が外からアクセスして勝手にカメラを操作するなどセキュリティ的な問題が出てくるかもしれない」と安全面での問題も挙げた。

安生氏は、「JSの細かなチューニングなどは昔のゲーム作りに似てきた。かつてゲームプログラムの構築でやっていたことをHTML5でやっているようなもの。開発者の中には『自分はJavaScriptで製品がつくりたかったワケじゃないんだ』と思っている人もいるのでは」とも述べる。

増井氏は一貫して肯定的だ。「HTML5の機能を駆使するといろんなことができる。工夫の余地があるというのは開発者にとっては魅力。“こういうことができそうだからやってみた”みたいなモチベーションをかき立ててくれる。ワンアイディアでアプリを開発して、飛び抜けたものを作るのはもはや困難だと思う。最近はLLVM(Low Level Virtual Machine)などの何でもJavaScriptでコンパイルできるツールを使って開発するなど、思い返せば、改めて原点に立ち返って組込のほうの言語に近いレイヤーに降りてやってきた1年だった」。

◆FLASHのデザインノウハウも取り込むべき

吉田氏はwebデザインの中心をなしてきたFLASHに変わりうるものとしてのHTML5への移行はデザイナーに負担がかかるのではと意見を述べる。「スマートフォンに限らず、カーナビなどにもUIにFLASHを使っているものもあるが、デザイナーにJSを書けと言われてもできない。なによりも、新天地であるはずのHTML5の仕様が決まっていない」。

増井氏は、「FLASHはその見せ方や優れたパフォーマンスなど、この10年培ってきた技術がある。1画面の中に収めて動きものをつくるなど、FLASHのデザイナーはツールの使い方がうまい。HTML5でもそういうところを取り込んでいかないと」とデザイン面で学ぶべきポイントはあると指摘した。

OSや端末なプラットフォームの差異を吸収できるHTML5は、開発工数を減らし、ひいてはアプリベンダーの収益化に貢献する「希望の星」的な存在だった。しかし、その「チューニングでいかようにも良くなる(=チューニングしないとパフォーマンスがでない)」といった“自由が効き過ぎる”要素が、開発者の負担になりつつあるということが今回の議論で明らかになった形だ。

ともあれ、スマートフォンの普及によってHTML5の導入普及が加速され、カーナビなどの組込機器においてもフロントエンド開発においてJavaScript/CSSが重要なポジションを得るに至ったことは疑いようがない。

《北島友和》

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