【ランボルギーニ ガヤルド LP560-4 試乗】モデル末期でもなお正常進化…山崎元裕

試乗記 輸入車
ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4
ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4 全 30 枚 拡大写真
事前に予想していたことと、現実とのギャップが大きければ大きいほど、モーター・ジャーナリストという仕事の面白さは増していく。最近それを改めて感じたのが、2012年のパリ・サロンでランボルギーニから発表された、これがおそらくは『ガヤルド』の最終進化型となるはずの、フェイスリフト版「LP560-4」、そして「LP560-4スパイダー」の両車だった。

正直なところ、その第一印象は良くはなかった。個人的には、2003年に発表されたガヤルドは、途中で何回かのマイナーチェンジを受けたとはいえ、時間の流れが残酷なまでに速いスーパースポーツの世界では、すでに十分すぎるほどの年数を生きたと考えていたし、次期モデルの誕生も近いと噂される段階でのフェイスリフトは、セールスに最後の加速度を生むための、安易な策と感じたからだ。

だが、この事前の予想は完全な誤解だった。最新のLP560-4は、モデル末期にしてもなお、スーパースポーツとしての正常進化を遂げていたのだ。すでにある自動車専門誌の仕事で、このLP560-4のパフォーマンスは、個人的には十分にそれを体験していたのが、今回は改めて、宮古島というロケーションで、このガヤルドの最新モデルを再び試乗するチャンスを得た。春というよりは初夏のそれに近い、強い日差しを受けて我々を待っていた試乗車は、クーペとスパイダーの両LP560-4と、駆動方式がRWDとなり、ミッドに搭載されるV型10気筒エンジンが、10psほど控えめなスペックとなる「LP550-2」の3台。ちなみに昨年行われたフェイスリフトは、LP560-4のみに対してのもので、LP550-2のエクステリアはこれまでのものをキャリーオーバーする。

まずは、今回用意されたシチュエーションにはベストな一台ともいえる、LP560-4スパイダーをチョイスして、試乗を始める。ここ数年、スーパースポーツの世界におけるオープンモデルでは、ハードトップを使用した、いわゆるリトラクタブルルーフの採用がひとつのトレンドとなっているが、ガヤルドのルーフはオーソドックスなソフトトップだ。オープン&クローズのプロセスは実にスムーズで、エンジンカバーが後方に向けて大きく姿は、それだけでも十分にドラマチックだ。時間にして、わずか20秒ほどのプロセス。ここにスパイダーのカスタマーは、何物にも代えがたい魅力を感じることになるだろう。

ミッドの5.2リットル版V型10気筒エンジンの最高出力は560ps。ガヤルドが2003年にデビューした時、搭載されていた5リットル版V型10気筒エンジンは500ps仕様だった。後にそれは520psへと強化され、そして2008年のマイナーチェンジで、この5.2リットル仕様が誕生した。このようなガヤルドのヒストリーを思い出してしまったのは、ソフトトップをオープンしたことで、コンパクトなキャビンにダイレクトに届くことになった太陽光が理由なのか。それは2003年、ガヤルドの試乗会がイタリアのローマ近郊、伝統のバレルンガ・サーキットをベースに開催された時にも感じた光の強さだ。ところどころにラフな路面のコンディションもまた、この時のそれに似ている。

だがガヤルドというスーパースポーツは、この10年間に飛躍的な進化を遂げた。

560psを発揮するエンジンは、同時に高回転域までスムーズな印象に終始するし、それに組み合わされるロボタイズドタイプの6速ギアボックス=eギヤの動きは、デビュー時からの進化はさらに大きい。シングルクラッチ式のこのミッションは、当然のことながらシフト時には一瞬、トルクが切断される瞬間があるが、ノーマルからスポーツ、そしてコルサへとモードを変更していくと、その切断時間は驚くほどに短いものになる。スタート時の半クラッチ制御も、10年間というガヤルドが生きた時間の中で、実に見事なものになった。

エクステリアでは、新デザインの前後バンパースポイラーと、マットブラックが標準色となったホイールが、最新モデルの証となるLP560-4。最初に書いた、事前の予想と現実のギャップの象徴的な例といえるのが、この新たなデザインが生み出した、魅力的なエアロダイナミクスだ。いわゆるダウンフォースの大きさ、そしてそれによる高速域での安定感は、最終進化形を名乗るに十分な、まさに熟成もここに極まったという印象を与える。もちろんオープン時のキャビンの快適さも、見逃してはならない。サイドウインドウと、ウインドディフレクターとしての機能も併せ持つリアウインドウを上げた状態では、走行中のキャビンは頭上にわずかな風の流れを感じるといったレベル。仮にそのすべてをオープンしても、その流れは不快なレベルにはならないから、安心してオープン走行が楽しめる。

続いてLP560-4、すなわち560psのエンジンをミッドに縦置き搭載する、フルタイム4WDモデルとしての走りの真価を、クーペモデルで体験してみることにした。

ビスカスカップリングを使用するガヤルドの4WDシステムは、やはりガヤルドをオンロードで使用するには圧倒的なアドバンテージになる。もちろんサーキットのような環境では、前輪はステアリングを、そして後輪はトラクションをという、明確な役割が与えられるRWDは魅力的な存在といえるが、路面の状況が刻々と変化するオンロードでは、前後輪間でトルク配分をオートマチックに、そして最適に変化させつつ、4輪から効率的にトラクションを路面に伝達するフルタイム4WDのメリットは大きい。

その有効性は、もちろんランボルギーニも強くそれを主張するところであるし、ワンメークレース車両の「トロフェオ」の駆動方式も4WDであることを考えれば、その主張にもさらなる説得力が生まれてくる。

けれどもLP560-4は、一般的なワインディング走行を楽しむといった程度では、それが4WDモデルであることを感じさせる場面は少ない。ステアリングの動きに対してのリアクションは、常にナチュラルなものに終始するし、結果的にそのコーナリングには、十分な軽快感が生み出されている。スタビリティデバイス=ESPの制御も巧みだ。そのセッティングは、eギヤのモードにリンクして変化するが、仮にその機能を完全にキャンセルしても、限界域でLP560-4をコントロールすることは容易だ。

ESPのキャンセルで、横方向の車体制御を自分自身の手に委ねたとしても、4WDシステムによってトラクションが常に最適化されているのは、個人的にはある意味、スポーツカーの理想像ではないかと思う。

■5つ星評価
LP560-4
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

LP560-4スパイダー
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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