【ホンダ アコード 発売】トヨタのTHS IIに勝つためのエレキ主導型ハイブリッド

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ホンダ アコード ハイブリッド
ホンダ アコード ハイブリッド 全 4 枚 拡大写真

ホンダの新型『アコード』の最大の売りは30km/リットルという驚異の低燃費だ。そこで気になるのは、大柄なアコードが、どうして、そのような数値を出すことができたのか? ということだ。

◆5mの大柄ボディながらプリウスに迫る燃費を達成

まず、前提としてハイブリッドのおさらいをしてみよう。ハイブリッドには、シリーズハイブリッドとパラレルハイブリッドの2種類がある。シリーズハイブリッドとは、エンジンで発電し、その電力によるモーター駆動でクルマを走らせる。一方、パラレルハイブリッドは、エンジンとモーターのふたつの力を共に使う方式で、エンジンとモーター(電力)を並列(パラレル)に使うため、その名称が付けられた。

しかし、これまで低燃費のトップランナーであったトヨタのハイブリッドシステム『THS II』は、プラネタリーギアによる動力分割機構を使ったシリーズ・パラレル・ハイブリッドである。状況に応じてシリーズとパラレルを使い分ける、「良いとこ取り」が特徴だ。逆説的に言えば、そうした両方取りだからこそ、「シリーズだけ」「パラレルだけ」のハイブリッドシステムよりも効率が高いと説明されていたのだ。

一方、新型アコードは、多くのシーンをシリーズハイブリッドで走行する。高速走行はエンジンの力で走り、そのときにモーターアシストも使うパラレルハイブリッドとなるが、基本はシリーズハイブリッドカーと呼んでいいだろう。それなのに、30.4km/lの『プリウス』に、5m近いサイズを持つ大柄でパワフルなアコードが燃費性能で迫る。

つまり、これまでの常識であった「シリーズハイブリッドはシリーズ・パラレル・ハイブリッドほど効率が良くない」を覆したのだ。

なぜ、そんなことが可能になったのか? 

◆「どのハイブリッドシステムにするか」からスタート

その疑問をアコードの試乗会で、ホンダのエンジニアに直接ぶつけたところ、本田技術研究所四輪R&Dセンターの第1技術開発室第2ブロック主任研究員の仁木 学氏などに説明してもらうことができた。

「ハイブリッドの効率を追求したいときに、どのシステムにすれば、最高になるのかを探るところから始まりました」と仁木氏は説明する。

そこでターゲットとなったのは、当然のようにトヨタのシステムだ。トヨタのTHS IIは、プラネタリーギアという機械系と、モーターやインバーターという電気系のメカニズムで構成されている。全体を見ると、機械系の比率が高いのが特徴だ。それに対して、シリーズハイブリッドは、エネルギーの伝達のほとんどが電気であるため、逆にシステム全体に対する機械系の占める比率は低い。

そこでポイントとなるのが、技術の洗練度であった。プラネタリーギアというクルマの機械系の技術は、すでに円熟の域に達しているのに対して、クルマの電気系の技術はまだまだ発展途上であったのだ。モーターやジェネレーター、インバーター、バッテリーへの電力の出し入れなど、そうした場面場面でエネルギーの損失が大きかった。たとえば、それぞれの損失がわずかに10%だとしても、それが二つ、三つと介在すれば、結果として大きな損失になってしまう。そのため電気系を多用するシリーズハイブリッドは、プラネタリーギアというこなれた技術を使うTHS IIに適わないというのが、過去の常識となっていたのだ。

◆進化の余地のある技術にフォーカス

「電気的なもの、モーターやインバーターを見てみると、まだまだ進化する余地があるなと。じゃあ、効率がどこまで行けば、TMS IIに勝てるシステムになるのか? と考えました。そして、シリーズ主体のハイブリッドの電気系が進化すれば追い抜くことができる」との結論に達したという。つまり、プラネタリーギアという、こなれた=これ以上進化しづらい技術が多くを占めるTHS IIに対して、電気系の占める割合の高いシリーズハイブリッドの方が伸びシロが大きいという判断だ。

もちろん、そのためには、モーターやインバーターといった電気系の進化は必須だ。「5年前のモーターの効率だと勝てなかった」と仁木氏も言う。そのため、「モーターの効率は、従来のシステムの常識と比べれば10%以上高まっています。ニッケル水素からリチウムイオン電池にすることで、電気の出し入れで失われる損失は4分の1になりました」などを実施。そんな進化の積み重ねが30km/リットルという燃費性能を実現させたのだ。

また、そうした新世代技術をホンダは『EARTH DREAMS TECHNOLOGY』と呼ぶ。このハイブリッド技術はアコードで終わることなく、続々と新型車に投入されるという。新しい技術で新しい価値を生み出してきたのが、これまでのホンダの魅力であったと思う。これからもホンダらしい独創性を盛り込んだ新型車の登場に期待したい。

《鈴木ケンイチ》

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