ESA、欧州次期主力ロケット「アリアン6」の基本構成を発表

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アリアン6の打ち上げイメージ図。現行の主力ロケット・アリアン5よりも小型で低コスト、即応性の向上が目標だ。
アリアン6の打ち上げイメージ図。現行の主力ロケット・アリアン5よりも小型で低コスト、即応性の向上が目標だ。 全 2 枚 拡大写真

7月9日、欧州宇宙機関(ESA)は次期主力ロケット『アリアン6』の基本構成を発表した。2021年に初打ち上げを予定しているアリアン6は、固体燃料2段、液体燃料1段の全3段構成となる。静止軌道に3~6.5トンの人工衛星を打ち上げることができる。

公表されたアリアン6の構成案は、2012年11月のESA閣僚理事会で開発が決定したのち、ロケット製造メーカー、アストリウムと協力会社6社の取りまとめた案を、ESAおよび開発の中心となるフランス宇宙機関CNESが了承したものだ。

全体の構成は『PPH』と呼ばれる固体燃料と液体燃料を組み合わせたもの。Pは"パウダー"、固体燃料を指し、Hは"ハイドロゲン”で水素を指す。ロケット下2段は『マルチPリニア』コンセプトと呼ばれるもので、4基の固体燃料モーターで第1、第2段を構成する。各モーターは135トン、うち3基を連結して第1段とし、残る1基が第2段となる。第3段は、アリアン5MEと共通の液体燃料エンジンを搭載する。『Vinci』と呼ばれる、再着火可能なエキスパンダーサイクル方式の液酸液水エンジンだ。フェアリング部は直径5.4メートルで現行のアリアン5と同程度の大きさのペイロードを収容できる。

アリアン6の開発に当たっては、開発費および運用コストの低減と即応性が求められている。現行のアリアン5よりも30~40パーセントのコスト削減を目指しているとされる。打ち上げ能力はアリアン5ECAが静止軌道に複数の衛星を投入するデュアルローンチに対応し、最大10トンの打ち上げ能力を有するのに対し、アリアン6はそれより小型で衛星1機のシングルローンチを目的としている。

アリアン6に先駆けて、アリアン5改良型のアリアン5ME開発が予定されている。再着火可能なVinci上段エンジンを新たに開発することで、複数の衛星を異なる軌道に投入できるだけでなく、衛星投入後にロケット上段を軌道から離脱させ、大気圏に再突入させて宇宙ゴミ(スペースデブリ)の低減を目指している。アリアン5MEの初打ち上げは2017年を予定している。

《秋山 文野》

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