【都会の廃線をたどる】終着駅に建立された石碑…目黒蒲田電鉄奥沢線

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奥沢線の終点・新奥沢駅跡に建立された、その名もずばり「新奥沢駅跡」の小さな石碑。人目をはばかるようにひっそりと建っていた。
奥沢線の終点・新奥沢駅跡に建立された、その名もずばり「新奥沢駅跡」の小さな石碑。人目をはばかるようにひっそりと建っていた。 全 6 枚 拡大写真

鉄道の廃止といえば、過疎化や自動車社会の深度化によって利用者が減った、ローカル線の話のように思われがちだ。しかし、東京のような大都会でも鉄道が廃止された例は、あまたある。

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東京急行電鉄(東急)池上線の雪が谷大塚駅(東京都大田区)付近から、新奥沢駅(世田谷区)までを結んでいた奥沢線も、「都会の廃線」の一つ。終点の新奥沢駅跡には、ずばり「新奥沢駅跡」と記された石碑が建立されている。その場所は、東急東横・目黒線の田園調布駅から、北東方向に歩いてわずか10分ほどの住宅地。小さな駐車場の脇に人目をはばかるようにして、ひっそりと建っている。

それにしても不思議なのは、新奥沢駅の位置だ。この駅が開業した時点で田園調布駅が既に存在したから、奥沢線がなくても鉄道の足は確保されていた。唯一の中間駅だった諏訪分駅にしても、田園調布駅や雪が谷大塚駅からそれほど遠くない。東急はなぜ、このような鉄道を建設したのか。

奥沢線を建設したのは、実は東急ではない。池上線はかつて、池上電気鉄道という名の鉄道会社が運営しており、その支線である奥沢線も同社が建設した。これに対し、かつての目蒲線である目黒線目黒~多摩川間と東急多摩川線多摩川~蒲田間は、東急の直接の始祖である目黒蒲田電鉄の路線。東横線も、目黒蒲田電鉄と関係が深い東京横浜電鉄が運営していた。

会社別に色分けした路線図を描いてみると、奥沢線の性格がはっきりする。池上電気鉄道が目黒蒲田電鉄の勢力範囲に「侵入」しようとするルートなのだ。このことが、奥沢線を廃止に追い込んだ理由の一つといえる。

池上電気鉄道は、自社路線と目黒蒲田電鉄の田園調布駅を連絡する調布線の建設を計画し、昭和初期の1927年3月に鉄道敷設免許を申請した。山手線の駅から蒲田まで競合している目黒蒲田電鉄の利用者を、自社路線に誘導しようという狙いがあったと見られる。

さらに調布線の申請から数カ月後、池上電気鉄道は国分寺線の免許を申請する。調布線を延伸する形で北西に進み、中央本線の国分寺駅に連絡するというルートである。現在の池上線が10.9kmであるのに対し、調布線と国分寺線の合計は約21km。ほぼ倍の距離の鉄道路線を新たに建設するというのだから、壮大な構想だ。

しかし、池上電気鉄道が打ち出した計画に対し、自社の勢力範囲を犯されることになる目黒蒲田電鉄は強く反発し、田園調布駅への乗り入れを認めない姿勢を取った。周辺の土地も同社が早々に押さえ、国分寺方面への延伸はおろか、田園調布駅への連絡も不可能になってしまった。結局、池上電気鉄道は田園調布駅から少し離れた場所までしか建設することができず、1928年10月5日、雪ヶ谷(現在の雪が谷大塚付近)~新奥沢間1.4kmが奥沢線として開業した。

徒歩で移動できる範囲の短い路線だったから、利用者はあまり多くなかった。そのほとんどは、中間の諏訪分駅付近にある調布女学校(現在の田園調布学園中等部・高等部)の通学客だったという。その上、昭和恐慌の影響などもあって池上電気鉄道の経営は悪化していった。

経営が弱体化した池上電気鉄道は1933年、目黒蒲田電鉄の傘下となり、翌1934年10月1日には目黒蒲田電鉄が池上電気鉄道を吸収合併してしまった。これにより奥沢線も目黒蒲田電鉄の路線となったが、周辺の路線で代替できる中途半端な盲腸線を経営し続ける意味はない。こうして1935年11月1日に廃止され、開業からわずか7年の歴史に幕を閉じた。

《草町義和》

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