プロトタイプの試乗を前に心配していたのはスタイリングだった。写真で見る限り、フロントマスクから全体の印象はキープコンセプト。『フィット』は今回で3代目だが、ここでキープコンセプトというのは、危険信号でもある。
かつてのヒット車の中で、初代が大ヒット、2代目は当然キープコンセプトで、これも勢いがあるので、ヒットする。しかし、3代目ともなると販売からの意見などが入り、冒険できずにこれまたキープコンセプトにし、ユーザーから飽きられる、というパターンだ。フィットよ、お前もかっ、と思ったのだ。
ところが実車を見ると、写真とはかなり印象が違っていた。3代目は写真うつりが悪い。新型は特にボディ後半のデザインがこれまでのフィットとはかなり印象が違う。サイドからテールランプにかけての造形はかなり個性がある。テストコースで抜かれたとき、抜いて行った新型フィットのナナメ後ろからの姿は、これまでのフィットにはない大胆な面使いからは、力強さと革新性が感じられた。これは売れそうだ。
メカニカルな部分では、エンジンは1.3リットル、1.5リットルのノーマル版の出来がいい。ハイブリッドも、新開発の1モーター方式を採用、デュアルクラッチは試乗車では、空転することも。まだ品質向上中という感じ。ハンドリングも直進時はやや重め。高速コーナーでの切り込みはやや軽め。スポーティなイメージだ。「RS」はMTとATの両方のハンドルを握った。7000回転まで一気に上昇するエンジンもいい。
どうやら3代目も売れそうな感じがしてきた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
石川真禧照│自動車生活探検家
日刊自動車新聞社を経て1971年からフリーの自動車評論家。1982年、I.W.オフィースを設立、自動車を中心としたメディア活動を開始する。自動車を生活の道具として捉える評論を得意とし、「自動車生活探検家」を名乗る。