【スズキ スイフト 試乗】デュアルジェットというネーミングに期待すると…丸山誠

試乗記 国産車
スズキ スイフト XS-DJE
スズキ スイフト XS-DJE 全 18 枚 拡大写真

スズキの低燃費戦略はエネチャージをコアにして着々と進行している。『ワゴンR』で初搭載されたこの技術は、軽自動車に水平展開されつつあるので、いずれは登録車の『スイフト』にも装着されることは予想していた。

だが今回のマイナーチェンジには「デュアルジェット エンジン」と言う隠し玉があったのだ。エネチャージと新エンジンのデュアルジェットの組み合わせで、1.2リットルの純ガソリンエンジン搭載車トップの26.4km/リットルをマークしている。

試乗車はもちろんデュアルジェットエンジンを搭載したトップグレードのXS-DJE。走りはじめると従来のスイフト1.2リットルより軽く加速する感じがする。とくに3000回転あたりから上のトルクが太くなっているような感じで、1.5リットルクラスに迫る雰囲気を持っている。さらにXS-DJEは7速パドルシフトが標準のため、ついマニュアルモードを選んで加速したくなるが、高回転域まで回すと意外にパワー感がない。1.2リットルだから排気量相応のパワー感なのだが、デュアルジェットという勇ましい名前のエンジン名を聞くと、どうしても強力な加速感を期待してしまう。ところがスポーティな性格のエンジンではないようだ。

CVTのためアクセル全開だと5000をややオーバーする回転域に固定されたまま加速するし、オートシフトアップのためレッドゾーンを極めることもない。試乗は市街地のみだったので、バーグラフ表示のタコメーターのレッドゾーンを見る機会はなかったが、一応6000回転からがレッドゾーンになっているらしい。

スポーティさで選ぶなら、同じ1.2リットルだがデュアルジェットではないRSの5速MTがいい。そもそもデュアルジェットエンジンを搭載するXS-DJEは燃費指向のグレードのためスポーティさを期待するほうが筋違いなのだ。そう思い直して走らせると市街地では2000回転ちょっと回せば周りのクルマの加速に同調することができ、燃費計の数字も上がりはじめる。ロードノイズをもう少し抑えられるともっといいが、低中回転域のトルク感はこのクラスのなかでは充実しているほうだ。

どうせならデュアルジェットではなく、直噴で燃費向上を達成してほしかったとエンジニアに伝えると、多くのジャーナリストから同様の声が届いているそうだ。スズキも将来的には直噴エンジンを視野に入れているようだが、現状でコストを考えると今回のデュアルジェットが最善だったという。1気筒に2本のインジェクターを使っても、直噴用のピエゾタイプのインジェクターよりはずっと安いらしい。ちなみにインジェクターはボッシュ製で、標準化されたESPもボッシュ製だ。

エコチャージの採用に合わせて、メーター中央にエネルギーフローインジケーターをレイアウトしている。このインジケーターは表示アイコンが大きくて見やすい。チャージ(回生)しているときのエネルギーの大きさを矢印が点灯する速度を4段階にして表しているというが、試乗時はまったく気づかなかった。点灯速度ではなく、回生量が大きいときは矢印そのものが太くなったり、色が変化したほうがわかりやすい。また、表示モード切り替えのノブとトリップのノブを1本で兼用しているのも使いづらい。燃費モデルならなおさら表示モードを切り変えたくなるので、ステアリングに切り替えスイッチを移設してほしい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌編集部に在籍後、モータージャーナリストとして活動。自動車専門誌や一般誌などで試乗インプレッションや新車解説を執筆。燃料電池車など環境関連の取材活動も行っている。また、キャンピングカーやキャンピングトレーラーの試乗、解説も行っている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

《丸山 誠》

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