【プジョー 208 GTi 試乗】固定概念を捨てた新208の柔軟性に拍手…家村浩明

試乗記 輸入車
プジョー 208 GTi
プジョー 208 GTi 全 12 枚 拡大写真

乗り込んですぐ感じるのは、身体を包み込もうとするかのような感覚の分厚いシートと、目の前の、ちょっと他車と違った景色---。

新208系はステアリングの径が小さく、そして、その位置が低い。ステアリングがドライバー目線にとって下方になったので、メーター類はステアリングの丸い径内には収まらず、その径の外に位置して、やや高めの位置に配されている。これはインテリアとそのレイアウトにおける新提案として評価したい。ステアリング径とメーター類とのこれまでの“長い関係”、つまり円形のステアリングに囲まれた範囲内にメーターはある、という固定概念を捨てた新208の柔軟性に拍手だ。

見方を変えると、この自由さによって、ステアリングとメーター類はそれぞれ、その最適位置に置けることになった。これまでは、メーターの視認性のためにはステアリング位置を上げ気味にした方がよかっただろうし、一方、操作性重視で位置を下げたステアリングの場合は、メーターを見るためにその“丸”の中を覗き込む必要もあった。このクルマのように、ステアリングとメーターの“リンク”を取り外すと、デザイン的なおもしろさだけでなく、インターフェイス上でもメリットが生じたはずだ。

さて、走りはじめると、前述の身体に強く密着してくるシートだけでなく、クルマが全体でドライバーを“包んでくる”クルマとの一体感はさらに高まる。サイズ的にも、大きくなく小さくなく…という印象で、また、アクセルをオンにしたときにはとくに、しっかりと駆動力(トラクション)が掛かってその感覚を強める。(おもしろいでしょ?)とクルマが話しかけてくると書くと、若干ヘンタイじみるが(笑)、このモデルがその全体で示す挙動には、たしかに一種の感動がある。つまり、走っていて愉しい!

シートは、ちょっとコーナーを攻めたときにも、横方向での身体のサポートに優れ、その密着感はまったく変わらず、ハードに攻めたときに非常に効果的だ。そしてそういう走りをしなくても、このシートは人を隙間なく包み、それでいてお節介な感じがない長所がある。身体のどこも浮かず、そして、身体のどこも圧迫しない。この点でいうと、旧GTが進化して「XY」となったバージョンは横方向でのサポートが強くなく、シティ走行なども考慮した、オールラウンド性重視のシート形状。存在を過度に主張しないという意味で、XYのシートの方が煩わしくないという見方はあり、個人的にも、XYのシートの日常使用でのお気楽さは捨てがたいと感じる。

そしてシートと同じく、足もGTiとXYでは異なっている。どんな状況でも、よりしなやかに動き続けるのはXYの方で、80年代のフランス車の感覚が戻ったと、往年の仏車ファンなら呟きそうだ。一方のGTiは、足はしっかりと固めてあるのだが、しかし、そうであっても、乗り心地面での硬さ(ゴツゴツ感など)がないのは、これまた新世代の“フレンチ・マジック”か。足がガッシリしているが、しかし“快”であるというこの設定は、スポーツ系プジョーの新展開だ。

とにかく、ドライビングしているときには間断なくクルマと一体でありたい! こんな欲求を抱えているドライバーには、このプジョーの新作「208GTi」は有効な選択肢となるはず。あの「205GTi 」が帰ってきたと言うと、メーカー側の宣言と同じになるようなのでここでは書かないが、しかしプジョーのコンパクトは、この「208」シリーズで“一皮剥けた”地平に達したと思う。上出来の最新『ゴルフ』がむしろ“脳”に合図をしてくるのに対し、208GTi は“心臓と血”に刺激をもたらす。そんなエモーショナル・コンパクトが、この208GTiである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★ 
オススメ度:★★★★

家村浩明|ライター&自動車ジャーナーリスト
1947年、長崎生まれ。カー雑誌やムックなどの編集を経て、1983年頃よりクルマ関連を中心に執筆活動をはじめる。クルマは“時代を映す鏡”として興味深いというのが持論で、歴史や新型車、モータースポーツとその関心は広い。市販車では、近年の「パッケージング」の変化に大いに注目。
日本メーカーが日常使用のための自動車について、そのカタチ、人とクルマの関わりや“接触面”を新しくして、世界に提案していると捉えている。
著書に『自動車コラム大全1984~1989』『最速GT-R物語』『プリウスという夢』(以上、双葉社)『ル・マンへ……』など。大久保力氏の著作『百年のマン島』(2008年・三栄書房)には編集者として関わった。

《家村浩明》

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