三菱 アウトランダーPHEV、盆明けから受注再開…世界での受注残1万台超

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アウトランダーPHEV。2013年1月に発売を開始したものの、わずか2ヵ月で不具合による生産・販売中止に追い込まれた
アウトランダーPHEV。2013年1月に発売を開始したものの、わずか2ヵ月で不具合による生産・販売中止に追い込まれた 全 7 枚 拡大写真

三菱自動車は、8月9日、「アウトランダーPHEV」リコール経緯説明会をジャーナリスト向けに開催。不具合による製造・販売中止に至るまでの経緯とその対策を説明するとともに、販売へ向けた今後の展開などについて質疑応答を行った。

説明会の冒頭、中尾龍吾 開発統括部門長・常務取締役は、不具合が発生した経緯について説明。今年3月、販売店でアウトランダーPHEVの充電中に発生し、以下の3点の事例について報告を行った。

(1)パワーオンになるもののREDAYにはならず、車両回りと車室内周辺に異臭が発生。電池パックの一部が溶けていた。
(2)パワーオンになるもののREADYにはならず、EVシステム警告灯が点灯し、走行不能になった。
(3)PHEVを充電中、電圧低下が見られ満充電にならずEVシステム警告灯が点灯。

その他、i-MiEV用電池パックが、完成検査の充電中に加熱・発煙し、約1時間後に発火する事例も報告された。

この不具合を受けて三菱自動車と、電池パックを製造したリチウム・エナジー・ジャパン社、その親会社であるGSユアサの3社は直ちに調査を開始。これまでの結果、電池メーカーの製造ラインに導入した「スクリーニング」と呼ばれる検査工程に問題があったと結論に至った。

スクリーニング工程では元々、異物混入を早期に発見することを目的に検索機器を使って様々な方向から振動を与える工程を含んでいた。しかし、この機器に手作業で電池セルを入れる途中に誤って落下。「高さ1.1mから落ちたこの時の衝撃は400G~500Gにもなり、それは車両同士の衝突を超えるもの(原口和典 開発本部EV要素研究部担当部長)」だという。調査ではその落下は数十件あったことがわかっており、その衝撃が加わった電池パックも本来取り除かれるべきものだったが何故か完成品の中に混じってしまった。これが今回の不具合につながったという。

ただ、不具合の発生率は100件のうち1件程度になるとし、大半は正常に動作するものだったという。とはいえ、重大事故への懸念も捨てきれず、三菱自動車はアウトランダーPHEVの製造販売を中止し、購入したユーザーには充電をしないよう連絡も取るなど万全を尽くした。さらに、不安を拭えないユーザーに対しては返金にも応じたという。

この一連の調査を踏まえ、三菱自動車が再発防止策としたのは、過度の衝撃を与えるスクリーニング工程を廃止し、集塵力を強化して異物混入防止策を徹底。さらに異物判定のための観察時間を従来の6日間から12日間に延長するというもの。手作業による工程はすべてビデオでの監視を続けることも明らかにした。

三菱自動車はすでに今回講じた対策の有効性を確認済みで、ユーザーに対するリコールも完了。これにより、アウトランダーPHEVは8月の夏休み明けより生産を再開し、同時に受注もスタートさせる。

では、今回の不具合を通してユーザーの不安はどうだったのだろうか。質疑ではこの件に関する意見も数多く出た。三菱自動車によれば、3月の不具合を公表した時点では約1400台を受注済みで、このうち約500台が注文取消になったという。ただ、残りの900台は受注として残り、今後の予約も含めると3500台ほどとなる。さらに海外分だけでも約1万1000台ほど受注があり、その配分に頭を痛めている状況にあるという。

また、電池パックの落下によって不具合が発生しているだけに、衝突などが発生したときの安全性どうなのかとの質問も出た。これについては、「バンパー交換程度の事故では問題ないが、全損扱いの事故ではバッテリー交換が前提(前出:中尾氏)」との回答がなされた。ということは、その分だけ修理代はかさむことになるわけで、これもリチウムイオン電池を使うPHEVの宿命。車両保険の加入は必須となりそうだ。

《会田肇》

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