SUPER GTのGT300クラスに参戦しているHitotsuyama Racingの「ZENT Audi R8 LMS ultra」。規則面を含めた厳しい戦況のなか、シーズン後半に向け、チームには「ふたつの大きな期待要素がある」とチームスタッフの一ツ山陽介氏は強調する。
複雑に絡まる日欧の車両規則に戦況を左右されがちな昨今のGT300。正直、アウディR8 LMSなどのFIA-GT3規定車勢にとって今季は厳しいシーズンだ。しかし、第4戦の前と第5戦の前にJAF-GT規定車勢のスピードを削ぐ調整措置が2段階で施され、さらにFIA-GT3勢には燃料タンク容量の自由度拡大というプラス要素も加わった。シリーズ残り3戦と、富士でのJAF-GP(特別戦)に向けて、戦える材料は揃いつつある。特に次戦第6戦富士(9月7~8日)はルール上、今季好調なJAF-GT勢を中心とするポイント上位陣のウエイトハンデが最高値に達するラウンドでもあり、ZENT Audi R8 LMS ultraにとって大きなチャンスといえるラウンドなのだ。
さらに今、チームには2つの期待要素があると一ツ山氏は言う。「ひとつは、今回(8月17~18日の第5戦鈴鹿)Audi Sportから2名のスタッフが現地に来てくれたんですが、次の富士にも彼らが支援に来てくれることですね」。自チームの強固なエンジニアリング体制に加えて、本国本陣のスタッフが現場にいてくれた効果は鈴鹿戦でも大きく、「実際にセッティング面に活きました。クルマの動きの改善につながりましたね」。これまでもドイツ本国サイドとは密なコミュニケーションを取って戦っていたが、それをより深めたかたちの臨戦態勢を組めるのは心強い。アウディ ジャパンとしても「Audi Sportとの連携強化を含め、今後も全面的にHitotsuyama Racingを支援していきたい」としている(小島誠広報部長・談)。
そしてもうひとつの期待要素は「今季から組んでいるハンコックさんのタイヤが、シーズンが進んできたことで我々のR8でのデータの蓄積もでき、進化してきていることです」(一ツ山氏)。韓国を代表するタイヤメーカーで、GT300でも高実績を誇るハンコックだが、初タッグとあっては、テスト量も限られているなか、すぐに真価発揮とはいかない。しかしシーズンを半分以上消化し、いよいよ態勢整ったり、というところなのだろう。第2戦に続いて今季2度目の富士での実戦となる次戦(第6戦)は、その意味でも力が入るところだ。
コース相性的には「第7戦のオートポリスは(現状のR8に)向いていると思います」(一ツ山氏)。そしてなにより、今のHitotsuyama Racing最高の武器はリチャード・ライアン選手だ。「乗ってすぐにマシンの状況を把握できるし、それをエンジニアやメカニックに伝える能力も素晴らしい」と一ツ山氏も絶賛する彼は、GT500でホンダ、ニッサン、レクサス(トヨタ)3社のマシンで優勝経験をもつなど、日本のコースやレースを熟知した精鋭外国人ドライバーだ。彼に引っ張られ、都筑晶裕選手もさらにレベルアップしており、ドライバー布陣はGT300でも屈指のものとなりつつある。
上位進出の可能性を見出せる状況となったシーズン後半、ZENT Audi R8 LMS ultraの戦いに大きな期待をかけたい。