ジャガー『XK』の中で最強のモデルとなる「XKR-S」は圧倒的な走りのパフォーマンスを備えたモデルだ。
搭載エンジンはV型8気筒5.0リッターのスーパーチャージャー仕様で、その中で最もパワフルなチューンが施されていて、405kW/680N・mのパワー&トルクを発生する。馬力に換算すると550psに達する数値である。
条件の良い道路でアクセルを踏み込んでみたら、豪快なサウンドを聞かせながら、文字通り背中を押されるような加速を示した。たちまちのうちに制限速度に達してしまうので、このエンジンの実力を試せるシーンは日本の公道にはない。サーキットでのスポーツ走行を楽しむための性能といえる。
ジャガー・ドライブ・コントロールで走行モードの選択ができ、ノーマルのほか、スポーツ、ウインター、ダイナミックなどが選べる。サーキット走行用のダイナミックを選ぶとメーターの色が変わり、DSCをオフにした走りになる。
アクセル操作に対する反応が敏感になり、6速ATの反応も鋭くなるが、一般公道で選択すべきモードではない。スポーツモードというかノーマルモードのままでも十分に走りを楽しめる。
乗り心地は相当に硬めで、快適性とは無縁な感じだが、これくらいに引き締められた仕様でないとエンジンのパワーを受け止められないのだろう。
インテリア回りの雰囲気などは正にジャガーといった感じのラグジュアリーさにあふれている。手触りの良いソフトグレインの本革シートや独特のアルミパネルなどがジャガーの世界を作っている。
運転席に乗り込むと、センターコンソールでスターターボタンが点滅していて、これを押すとダイヤル式のATセレクターレバーが競り上がってくるのは、最近のジャガー車に共通するセレモニーだ。
XKR-Sの価格は1750万円の設定。これくらいのクルマになると、価格が高いとか安いとかという問題ではなくなる。絶対的には相当に高いものの、性能を考えたら納得できる価格でもある。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。