クーペをオープンにしただけの話でしょ…の考えは甘かった。走りも装備もデザインも『DS3 CABRIO Sport Chic』は、独自の驚きが満載だったからだ。
トランクリッドが上方にせり上がるように開くのは驚きのひとつ。発見した瞬間「楽しそう、日常的に使ってみたい!」と思った。開口部は小さめ、容量もそこそこだが許せてしまう。デザインでは、30個のLEDを使い、奥行き感のある光らせ方が目を惹くリヤコンビランプも気が利いている。LEDの粒をただ口髭のように並べただけとは訳が違うセンスのよさだ。“DSモノグラム”のソフトトップもこれはもうフランスのセンスに脱帽という感じ。3本の糸で平織りで仕上げた上質な素材を使う。
オープン走行はもちろん爽快。リヤウインドもしっかりと視界を確保。オープン時の不快なドラミングはなく、一方で開いた状態から閉じてみると、クローズ状態での気密性、静粛性はかなり高いことがわかる。開閉の所要時間は16秒、120km/hまで(!)走行中でも操作可能という。
走りもいい。乗り心地はクーペより優しく、かつオープンボディだが粗さも気にならないレベル。ハンドリングも素直で扱いやすい性格。1.6リットルターボはパワフルだが柔軟で、シフト、クラッチペダルも洗練された感触に仕上げられ(メルセデス・ベンツ『SLK200』のMTにヒケをとらない)、操作しているのが心地いい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。