大幅な改良を受けたメルセデスベンツ『Eクラス』には初めてハイブリッド車が設定された。
V型6気筒3.5リットルエンジンを搭載するE350をベースに、エンジンルーム内にリチウムイオン電池を搭載し、エンジンとトランスミッションの間に電気モーターを設定するなどの方式は『Sクラス』のハイブリッドと共通だ。
モーターの出力は20kW/250Nmとされていて、旧型のSクラス用よりもやや強力。新型Sクラス用を先取りする形で搭載している。
ハイブリッド化により、動力性能を向上させながら15.2km/リットルの燃費を達成した。ガソリン車のE350は12.4km/リットルだから、20%以上の向上が図られた。
アクセルを踏み込むと、瞬間的に電気モーターの加速が加わって力強い加速が得られる。が、リチウムイオン電池の搭載量が少ないので、すぐに蓄えた電力を使い切って通常のガソリン車の走りに戻る。このあたりの感覚はF1のKERSを思わせる。限定的な電気の使い方をするハイブリッド車である。
ただ、E400ハイブリッド・アバンギャルドは、E350アバンギャルドに比べてたったの18万円しか高くない。ハイブリッド化することで、電気モーターやリチウムイオン電池を搭載しながらこれだけの価格差というのは信じられないくらいだ。
電池はエンジンルーム内に搭載されているので、トランク容量はガソリン車と変わらず、使い勝手の面でハイブリッド化によるデメリットはほとんど感じさせない。
こうなるとE350の存在意義が薄れるのも仕方がない。V型6気筒エンジンの搭載車を買うユーザーは多くの人がE400ハイブリッドを選ぶことになるだろう。
と言いたいところだが、E400ハイブリッドには大きな問題点がある。左ハンドル車しか設定されていないのだ。ハイブリッド車が人気を集めるアメリカ向けに作られたものらしく、そもそも右ハンドル車は作られていない。日本で左ハンドルだけでは話にならない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。