【CEATEC13】モバイル用OSの覇権争い激化、TIZEN IVIの実力は

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
マルチスクリーン、メディア伝送用のライブラリの事例(NTTデータMSE)
マルチスクリーン、メディア伝送用のライブラリの事例(NTTデータMSE) 全 11 枚 拡大写真

今年のCEATECの特徴は、ホンダやマツダなど自動車メーカーの出展が増え、関連の展示が強化されている点だ。CEATECでは常連ともいえるインテルが、パートナー企業とともにTIZEN IVIの集中展示を行っていた。

TIZENは、サムスン、インテル、NTTドコモなどが開発を支援しているスマートフォンなどモバイルデバイス向けのOSである。日本では、NTTドコモが年末にTIZEN OSを搭載したスマートフォンを発売すると発表している。特徴は、HTML5とネイティブアプリ(デバイスやOSごとに開発するアプリ)の両方に対応しており、高度なWebアプリの開発にも、レスポンスやパフォーマンスを要求されるアプリの開発にも力を発揮できることだ。

インテルは、TIZENをベースにIVI(In-Vehicle Infotainment)向けのプラットフォームを開発し、サードパーティとともにさまざまなIVI機器、アプリ、サービスの提案を行っている。通常、カーナビにスマートフォンとの連携機能を実装するには、カーナビのプログラムそのものに機能を追加したり、開発しなおす必要がある。カーテレマティクス、インフォテインメントを実現する場合も、それぞれの機器を用意する必要があった。

車内の情報端末としてはカーナビを基本に、車載カメラ、センサー、ODB情報、ITS、スマートフォン、Webサービス、メディアプレーヤーなどすべての情報機能が集約できればよいのだが、現状でそれを実現するには、本体が複雑になりすぎたり、高価なものになりがちだ。つまり、自動車をとりまくさまざまな情報や機器を統合するプラットフォームがないため、似たような機器やモジュールをいくつも用意しなければならない。ディスプレイオーディオという考え方もあるが、これは主に画面や音声などヒューマンインターフェイス部分のプラットフォームといえるので、いずれにせよ、データや処理を集約するプラットフォームが必要である。

TIZEN IVIは、車載情報機器、システムの統合プラットフォームを目指したものだ。センサー処理やカーナビ、スマートフォン連携などはネイティブアプリが担当し、画面表示、クラウドを含むWeb・インターネットアクセスおよび画面表示や操作系などフロントエンド処理をHTML5アプリにまかせるといったことが簡単にできる。簡単になる理由は、共通プラットフォームであるため、各種ライブラリ・ユーティリティ・ミドルウェア、さらにクラウド上のデータベースサーバ、アプリケーションサーバなどの利用がしやすくなるからだ。

インテルのブースでは、これらのミドルウェアやアプリケーションの事例が展示されていた。例えば、NTTデータMSEは、マルチアプリ、マルチウィンドウ、動画転送に関するライブラリを開発し、マルチスクリーンに、スマートフォンからの動画、カーナビ画面、車速他走行情報画面などを表示するデモを行っていた。

systenaという会社は、ナビアプリに独自のO2O情報を提供するためのクラウドプラットフォームを開発し、NFCで認識した端末ごとに施設情報をカスタマイズしたナビアプリを展示していた。FUJISOFTは、車のセンサー情報をロギングし、運転状況や特性を分析してその人の運転パターンに合わせた自動車保険を設定するというシステムの展示だ。トヨタは、アプリごとの機能や制御方針を定義して、走行状態やアプリの操作によって表示位置、優先する操作、禁止する操作などを統合的に管理するUIマネージャを紹介していた。UIマネージャは、多数のアプリや機能が動作するIVI機器では重要な機能だ。

ゼンリンはTIZEN IVIで3Dナビを実現するデモを行っていた。ルートガイドをしながら、建物の状況が立体的にオンタイムで表示される。3Dの描画は間に合うのかという心配があるが、担当者によればネイティブアプリが実装できるので処理速度は問題ないとのことだ。このアプリはスマートフォン向けの「いつもNAVI」でもサービスする予定があるものだそうだ。

日本の自動車メーカーは、カーテレマティクスの機器やサービスを考えるとき、純正サービスや自社システム、自社製品にこだわる傾向がある。安全や信頼性を考えるとやむを得ない部分もあるが、多様なデバイス・サービス・ネットワークとの連携を考えるなら、共通プラットフォームの上で、さまざまなサービスや機能を利用するマッシュアップまたはパートナーシップによる水平展開を考える必要もあるだろう。

《中尾真二》

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