ワイヤレス給電の理想と現実、課題山積み

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ワイヤレス給電の理想と現実、課題山積み
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2013年10月1日から開幕した「CEATEC JAPAN 2013」において、トヨタはワイヤレス給電(非接触充電)の展示を行った。

『プリウスPHV』のトランク下に受電用のコイルを仕込み、磁場の共振現象を利用してワイヤレス給電を実現する。システムの出力は2~2.5kW程度で、4.4kWhのリチウムイオン電池を搭載するプリウスPHVならば、約90分で満充電が可能だという。この充電に必要な時間は、200Vコンセントでの満充電にかかる約90分と同等だ。つまり、トヨタの提案するワイヤレス給電は、急速充電ではなく、普通充電に代わるものとなるわけだ。

トヨタはこのシステムに関して2014年、日米欧において実証実験を行うという。「システムの完成度はそれなりに高く、実証実験では、主に使い勝手や安全性の検証になる」と、トヨタの説明員は言う。

また、展示会では、TDKをはじめ、村田製作所、田淵電機などあちこちで自動車用のワイヤレス給電システム関連の展示を見かけることができた。ここまで話を聞いてみると、ワイヤレス給電の実用化は近いように思えるかもしれない。しかし展示の内容をよく見て聞いてみると、「まだ、電磁誘導方式で統一されるのか、磁界共鳴方式で行くのかが決まっていない」「開発の初期段階のうちに提案しておかないと、本格的な実用機の設計に組み込まれることができない」「位置決めの方法は、まだ検討中だ」「走行中のワイヤレス給電は、まだまだ先」という。実用化は遠い。

そこでトヨタの説明員に「実用化はいつなのか?」と尋ねてみれば、「4年以上はかかるのではないか。でも、10年はかからないはず」と、なんとも歯切れが悪い。

現実問題としてワイヤレス給電の実用化にはいくつものハードルが存在する。効率的なシステムの構築や安全性の確保、さまざまな車両に対応するフレキシブルなシステムの実現、車両と給電側の位置決めの容易さの実現、安全性確保などの技術的な問題がある。また、自動車メーカーや車種ごとに、給電方式が異なっては困るわけだから、業界をあげての規格の統一も必要だ。もちろん、コストダウンも重要課題だ。給電側のシステムが1基数百万円では、普及は、当然のように遠くなる。

新しい技術の普及には困難がつきもの。重く充電ケーブルを使った給電作業は、操作も面倒で、正直、わずらわしいものだ。ワイヤレス給電が実用化されれば、EVやPHVの普及もさらに促進されることだろう。

期待のワイヤレス給電だが、今回の展示会を見る限りでは、実用化まではもう少し時間がかかるようだ。今後の開発の加速を期待したい。

《鈴木ケンイチ》

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