道路の下にある四国の新幹線…大鳴門橋と瀬戸大橋

鉄道 企業動向
鳴門海峡を渡って淡路島と四国を結んでいる大鳴門橋。橋りょうの下層部(トラス桁内)に鉄道用のスペースが隠されている。
鳴門海峡を渡って淡路島と四国を結んでいる大鳴門橋。橋りょうの下層部(トラス桁内)に鉄道用のスペースが隠されている。 全 6 枚 拡大写真

JR四国が9月30日に発表した予土線の観光列車、「鉄道ホビートレイン」が話題になっている。既存の気動車を改造して2014年3月頃から運転を開始する予定だが、今回発表されたイメージ図によると、外観はかつて東海道・山陽新幹線で運転されていた0系車両そっくりだ。

四国には新幹線がない。JR北海道を営業主体とする北海道新幹線が予定通り2015年度に部分開業すると、JR四国はJR旅客6社のなかで唯一、新幹線を運営しない会社になる。にも関わらず「新幹線風」の列車を走らせるというのは、ちょっと不思議な気がしないでもない。

同社によると、1955~1963年に国鉄総裁を務めた故・十河信二にちなんでいるという。在任中に東海道新幹線の計画を推進し、「新幹線生みの親」とも呼ばれている十河は愛媛県西条市の出身。予讃線の西条駅前には「鉄道歴史パーク in SAIJO」があり、十河にちなんで0系の先頭車が展示されている。

それなら予土線ではなく予讃線を走らせればいいのではないかと思うが、2011年から予土線で運行されている「海洋堂ホビートレイン」が好評であることから、同線で運行することにしたという。西条市から離れているものの、予土線の一部は愛媛県内を通っているし、そもそも四国という大枠で考えれば、十河と全く縁がないわけでもない。

それに、計画だけなら四国にも新幹線は存在する。1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づき四国新幹線(大阪市~徳島市付近~高松市付近~松山市付近~大分市)と四国横断新幹線(岡山市~高知市)の基本計画が決定している。石油ショックや国鉄の経営悪化などの影響で事実上凍結された格好となっているが、法律上は今でも有効な計画だ。

新幹線の建設を想定した準備施設も、部分的だが建設されている。四国新幹線は淡路島を経由して本州と四国を結ぶルートが想定されているが、このうち淡路島と四国の間にある鳴門海峡を渡る大鳴門橋は、鉄道建設用のスペースが確保されている。

自動車で大鳴門橋を通ったことがある方なら「そんなスペースは見たことがない」と思われるかもしれない。実は道路の下に、新幹線の線路2本分を通すことができる鉄道用のスペースが確保されている。橋の両端には「鳴門の渦潮」をみることができる展望用の通路や展望台が設置されており、ここから鉄道用に確保された空間を見ることができる。

四国横断新幹線の想定ルート上にある瀬戸大橋も、上層に道路用スペース、下層に鉄道用スペースをそれぞれ設けた2階建て。このうち鉄道用スペースは在来線の線路2本と新幹線の線路2本、あわせて4本の線路が敷ける空間が確保されている。本来の計画では橋の西側2本分が新幹線、東側2本分が在来線のスペースとなっているが、現在は橋の中央寄りに在来線(瀬戸大橋線)の線路2本が敷かれているだけ。新幹線の列車を走らせることはできない。

「鉄道ホビートレイン」は予土線での運転が予定されているが、たとえば一時的なイベント列車として瀬戸大橋線での出張運転を行えば、「瀬戸大橋を通る四国横断新幹線の列車」を演出できるのではないかとも思う。もっとも、今のところ「そういった計画はありません」(JR四国広報室)という。

《草町義和》

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