JAXAなど、X線天文衛星「すざく」を使って「鉄」はどこからきたのかを解明

宇宙 科学
100-120億年前の宇宙の想像図。星が大量に生まれ、超新星爆発を起こして死んで、周囲にある多くの重元素を作り出した。同時期には、巨大ブラックホールもまた急成長しており、そこから強いジェットや風が吹いたと考えられる。超新星爆発とブラックホールのエネルギーは強力な風を生み、この風に乗って大量の重元素が宇宙中にばらまかれたと考えられる。(画像提供:池下章裕)
100-120億年前の宇宙の想像図。星が大量に生まれ、超新星爆発を起こして死んで、周囲にある多くの重元素を作り出した。同時期には、巨大ブラックホールもまた急成長しており、そこから強いジェットや風が吹いたと考えられる。超新星爆発とブラックホールのエネルギーは強力な風を生み、この風に乗って大量の重元素が宇宙中にばらまかれたと考えられる。(画像提供:池下章裕) 全 2 枚 拡大写真

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、スタンフォード大と、X線天文衛星「すざく」を用いた観測で100億年以上前の太古、鉄などの重元素が宇宙全体にばらまかれた時代があり、それが現在宇宙に存在する、ほとんどの重元素の起源であることを確認したと発表した。

鉄などの重元素は、宇宙の始まりであるビッグバンの時点では存在せず、星の中で合成された後、その星が最後に超新星爆発を起こすことで周辺の空間に拡散した。宇宙誕生から約30億年後(現在から約110億年前)に、星が大量に誕生し、星の大集団、銀河が生まれたと考えられている。

星々で生まれた重元素が銀河の外まで運ばれることは知られていたが、この時代の重元素が銀河の中や近くにとどまっていたのか、銀河間空間を遠方にまで大きく広がったのかについては分かっていなかった。

全宇宙にある鉄など、重元素の多くが生成されたこの時期、重元素がどのように宇宙中に広がったのかを知ることは、身の回りの重元素がどこから来たのかを知ることになる。

今回、スタンフォード大学カブリ素粒子宇宙論研究所のノロベルト・ウェルナー研究員、JAXAインターナショナルトップヤングフェローのオーロラ・シミオネスク研究員による研究グループは、高い感度と分光性能を持つX線天文衛星「すざく」を使って、ペルセウス座銀河団の広い範囲にわたって鉄の割合を調べ、そのばらつきが小さいことを発見した。

得られたデータからは、ばらつきが全くないと考えられ、銀河の分布と相関していない。1000万光年にも及ぶ広い範囲について、鉄の割合がほぼ一様であることから、鉄のほとんどは、銀河団が形成された時代よりも前に、宇宙に大きく広がりよく混ざっていたと考えられる。銀河団の誕生は宇宙誕生から約40億年後と考えられており、今から100億年以上前、鉄などの重元素が星々から大量にまき散らされ、宇宙中に拡散した時代があったこと、現在の宇宙に広がるほとんどの重元素はその時代にまき散らされたものであることが推測される。

つまり星々から生み出された重元素は、銀河からの強い風に乗って宇宙中に拡散していたと考えられる。

今回の結果は、「すざく」衛星を用いた「キープロジェクト」と呼ばれる、特別な大規模観測プログラムから得られた。

ペルセウス座銀河団を、2週間にわたって、かつてない精度で観測したことで、鉄の分布を精度よく知ることが初めて可能となった。

今後、「すざく」や、より高感度の次期X線天文衛星ASTRO-Hなどを使って、他の銀河団でも同様な現象がみられるのかや、複数の銀河団を含む大規模構造全体ではどうなのかなどを調査することで、重元素の生成とその拡散の歴史に関する理解を進める。

今回の成果は英科学誌「ネイチャー」の10月31日号に掲載された。

《レスポンス編集部》

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