【インタビュー】7900万台をビジネスに取り込む、経営者の“角度”…ツールプラネット浅野一信社長

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ツールプラネット浅野一信社長
ツールプラネット浅野一信社長 全 13 枚 拡大写真

岐阜県岐阜市の金華山。山頂付近に岐阜城天守閣、その山麓に位置するツールプラネットは、スキャンツール(故障診断機)を販売する。

台湾のスキャンツールメーカー、オートランド社と連携し、国内でのスキャンツール販売を手がける同社は、近年販売を拡大している。

国内約7900万台(自動車検査登録情報協会、2013年)の保有車両がビジネスの対象となるアフター市場において、整備事業者からスキャンツール販売事業者へと転換を図った同社。浅野一信社長に事業軸の転換を実現した経営者としての考え方や、スキャンツール市場の見通しを聞いた。

1980年代初頭、スキャンツールを使いたかった

当社の創業は1953年です。前身は岐阜ミシマモーター。自動車整備事業者でした。2輪4輪、輸入車の整備事業を手がけていました。私は20代より、スキャンツールを探していました。簡単な自己診断モードが搭載された車が登場し、雑誌等で情報を収集していました。

自分の整備でスキャンツールを利用できれば、ディーラーに頼る事も減り、仕事も増えます。結局、自分が必要だから探しました。最初はラスベガス、SEMAショーですね。ここでどうしてもスキャンツールを買って帰りたかった。これが1987年です。私は30歳になる年で、経営にも携わるようになっていました。アメ車用のスキャンツールはすでにかなり利用していました。

私は1957年生まれですが、30歳の時に父から会社を受け継ぎました。親が経営していた修理工場を任せてくれるのかくれないのか。任せてくれないなら独立すると明言しました。男は30歳くらいで、これからの事を改めて考えますよね。

整備士が日本でスキャンツールを売る

オートランドに、日本でスキャンツールを使いたいがために口実として代理店をしたいと話をしたのが始まりです。

1997年にオートランドからスキャンツールを買いました。その後1998年2月には10台のスキャンツールを買い、日本で売りました。オートランドにとってはインパクトがあったと思います。いち整備士がスキャンツールを10台、また10台と日本で売る訳ですから。

結局、日本の代理店を作ろうとオートランドに話をし、オートランドジャパンを立ち上げました。

整備業ばかりでは難しい

事業内容の比率は当初10:0で、整備業が中心でした。いまは、スキャンツールの販売事業が10:0です。これは会社を変えていくぞ、という私の意志で従業員には働き方も変えてもらいました。

事業軸を移す判断を決定づけたのは、車の配線修理をしていて、細かな修理が見えないと実感したときです。眼鏡をかけて車の下に潜るのは大変な作業で、私にはもう整備の現場で稼ぐのは難しいという感覚があった。整備業ばかりでは無理だと考え、スキャンツールの販売を伸ばしていった方が良いと感じたのが45歳くらいです。

そこから本格的にスキャンツールの販売だけで事業を展開したいと考えました。変化は少しずつ。まずは車両の診断を、外部から受注するようになりました。格好としてはカルテを作るようなかんじでしょうか。カルテを作って、実際の修理は他でお願いしますと。

現場感覚、欲しいものは何かをわかっていること

スキャンツールを販売し始めた最初の10年を振り返ると累計販売台数は2000~3000台くらいでしょうか。もちろんオートランドの製品です。大まかに言うと月20台×12か月×10年という計算です。

それがここ3年で累計販売台数は3万6000台くらいですね。直近の3年は、当社のオリジナル製品も展開しています。換算しているのは「TPM1000」と「TPM2000」各シリーズです。

大事なことは、自分がほしいものは何か、分かっていること。20年以上の現場経験がありますので「いくらなら出せるか」「何が出来たら買うか」を体感として持っています。これらがマッチした結果、近年の販売台数につながったと考えています。

ではその後、何をしたいか。データを見たい、アクティブ(車を動かした状態でスキャンツールを利用)に使いたい、などの要望に対応したのがTPM2000です。

高価な製品、サービスが求められているのか

自分の体感から値段とスペックを決めていますので、必然的に次はどうする、というステップを考えることができます。仮に次期型“TPM3000”に、何を搭載すべきかはすでに見えています。考え方としては、少しずつ現場にあったものを出していけば良い。勉強するのも少し、価格的にも、スペック的にも少しずつ高まればそれで良い。

当社は、アフターサービスを受け付けていません。基本的には売り切りです。もしアフターサービスをする場合は、その分を儲けなければならない。製品の価格に転嫁しなければなりませんし、サービスの体制整備をしないといけない。簡単にいうと悪循環なのです。

最新スキャンツールは価格も見た目も“1人1台”

当社の製品は、ケース、見た目にこだわりました。端末のカバーにしても、スマホにあるもので、イメージが理解されやすい土壌ができています。

これから特に理解してもらいたいことは、故障診断機で自分の車をカスタマイズできる、ということです。診断機を用いて車の設定を個人に最適化することができます。

そうした機器を市販していきたいということで開発を進めています。2013年末~2014年年始の市場投入を目指しています。市場がどのように反応するか、ということには興味があります。診断機の機能を個人用に切り出し、ユーザー1人に1台のスキャンツールを実現できないか、チャレンジしていきます。

《土屋篤司》

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