国連宇宙活動に貢献する日本 土井隆雄さんが講演 世界の宇宙ニーズを掴む

宇宙 科学
第3回「宇宙法シンポジウム」で講演する土井隆雄 国連宇宙応用専門官
第3回「宇宙法シンポジウム」で講演する土井隆雄 国連宇宙応用専門官 全 3 枚 拡大写真
2013年11月5日、慶応義塾大学宇宙法研究所主催による、第3回「宇宙法シンポジウム」が開催。国連宇宙部で宇宙応用専門官を務める元宇宙飛行士、土井隆雄さんが登壇。国連の宇宙活動への日本の貢献について解説した。

国連宇宙部は、ウィーンに本部を置く国連組織のひとつ。宇宙の平和利用を進める宇宙空間平和利用委員会の事務局機能のほか、まだ自力で宇宙へのアクセス手段を持たない開発途上国に対して、宇宙技術の恩恵を受けられるよう取り組みを進めている。

この取り組みの中で、日本が主導した活動に「基礎宇宙科学」分野での文化助成事業がある。国立天文台が中心となり、望遠鏡やプラネタリウムを世界に配布したのだ。望遠鏡はタイやモンゴルなどアジアを中心に8カ国、プラネタリウムはミャンマーやマレーシアなど19カ国におよぶ。

2009年からは、「基礎宇宙技術イニシアチブ」プログラムのもとで、小型衛星開発、運用技術の育成事業を行っている。開発費が低コストの超小型衛星は、途上国にも宇宙へのアクセス、利用の第一歩となるため注目されているが、宇宙ゴミ問題など宇宙利用のルール順守を求めなくては、宇宙先進国、途上国ともに将来の宇宙活動に影響を受けてしまう。九州工業大学は、超小型衛星技術を専門とした留学生向けプログラムを実施しており、新興国から博士課程の学生を受け入れてきた。2013年には5名の入学者を受け入れており、2014年から修士課程も対象に拡大する。技術に関する教育を行う中で、小型衛星の利用で「スペースデブリ(宇宙ゴミ)を増やさない」「(人工衛星が利用する)周波数の国際割り当てを守る」といったルール順守も自然に啓蒙していくことができる。

2013年からは、地上で微小重力の環境を模擬できる実験装置の配布を開始した。「クリノスタット」と呼ばれる、連続的な回転で重力が加わる方向を変化させ続けることにより、植物の種子などへの重力の影響を国際宇宙ステーションのような微小重力環境と同じにできる装置だ。2013年には13カ国、2014年には第2次配布が始まる。地上で宇宙実験の準備段階を進められることで、国際宇宙ステーション利用への関心を呼び起こすことができる。途上国がどこま有人宇宙活動に関心を持っているのかという疑問もあったが、今年9月、中国・北京で開催された有人宇宙技術に関するワークショップでは38カ国が参加するなど、関心は高いという。また、プラズマエンジン開発で話題となったコスタリカのベンチャー企業はエンジンを国際宇宙ステーションの高度維持に利用する提案を行うなど、意欲的な取り組みも見られるという。

今後、日本が国連に協力して日本の存在感を高められる活動として、土井さんは国際宇宙ステーション 日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星放出機構の利用機会を世界に提供するよう提案した。新興国を中心に高まる超小型衛星の開発意欲に、日本独自技術で答えることでニーズに適切に応えられる。また、成果が問われている「きぼう」の利用を増やすこともできる。

国連で実施する宇宙応用プログラムへの参加国と希望する分野の変遷を見ると、どこの国が宇宙のどの分野に関心を持っているのかがわかる。2010年までの資料では、最近はGNSS(全地球航法衛星システム)技術への関心が増えてきているとのことだ。国連を通じ宇宙活動への支援を行うことで、ビジネスにも応用できる世界の国々の宇宙への「ニーズ」を適切に把握できるのではないだろうか。

《秋山 文野》

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