露フォボス・グルント後継計画、得られる火星サンプル量に米研究者が見通し

宇宙 科学
マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した火星の衛星フォボス
マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した火星の衛星フォボス 全 1 枚 拡大写真

米ロードアイランド州ブラウン大学は、ロシアが計画している火星の衛星「フォボス」サンプルリターン計画「フォボス・グルント」後継機について、フォボス表面から得られるサンプルには火星由来のサンプルも含まれていると明らかにした。

フォボス・グルント後継計画は、2020年打ち上げを目標にロシアが計画している、火星の衛星フォボスから表土を採取し地球に持ち帰る探査計画。フォボス表土(レゴリス)には、火星由来の物質が含まれていると考えられており、フォボス表土を採取すれば火星からのサンプルリターンも同時に達成できるとの見通しがあった。しかし、火星由来物質がどの程度含まれているか、またフォボスのどの地点に存在するか、ロシア側は詳細な見通しを持っていなかったという。

ブラウン大学の地質学者ジェームズ・ヘッド博士らの研究グループはこの点について検討し、フォボスの表面には火星への天体衝突で吹き飛ばされた塵、土壌、岩石が存在していると確認した。研究成果は「プラネタリー アンド スペース サイエンス」誌に「Mars impact ejecta in the regolith of Phobos: Bulk concentration and distribution」の表題で発表されている。

ヘッド博士らの見通しでは、フォボス表土の40センチから1メートル程度の深さに火星由来の塵などが堆積している。フォボス表面に均等に広がっており、採取した場合100万分の250(250ppm)程度の割合で火星由来の物質が含まれているという。

フォボスが火星の衛星となった経緯については完全に明らかにされていない。小惑星が火星の重力に捉えられたとも考えられており、密度はかなり低いためフォボス内部に氷が大量に含まれている、またはがれきが集まって空隙の多い「ラブルパイル」構造であるとの予測もある。サンプルリターンが成功すれば、フォボスの来歴がさらに詳しく判明する可能性がある。

「フォボス・グルント」探査機は、2011年11月にロシアが打ち上げた火星と火星の衛星フォボス探査機。中国やアメリカのモジュールも搭載し、2012年に火星周回軌道で観測を行ったのち、フォボス表土を採取、地球に持ち帰る計画だった。しかし、打ち上げ後間もなくソフトウェアが原因と見られる問題で地球の軌道から脱出できなくなり、2012年1月に地球の大気圏に再突入した。13トンを超える巨大な探査機のため、破片が地表に到達する可能性も懸念されたが、実際の被害はなく終わった。

《秋山 文野》

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