【BMW 3シリーズ グランツーリスモ 試乗】使い勝手は良好も軽快感は薄れた…松下宏

試乗記 輸入車
BMW3シリーズ グランツーリスモ
BMW3シリーズ グランツーリスモ 全 16 枚 拡大写真

BMWはモデルバリエーションの拡充に熱心で、今年は『3シリーズ』にハッチバックボディの「グランツーリスモ」を追加した。セダンとワゴンとSUVの良いとこ取りをしたクルマという触れ込みである。

リヤにハッチゲートを持つ5ドアながら、流れるようなルーフラインはクーペを思わせるようなところがあり、ラゲッジスペースの広さはステーションワゴンを思わせる。また高めの全高がSUV的な感覚も感じさせる。

ボディはけっこう大きい。ツーリングと比較すると、ホイールベースが110mm延長され、ボディは200mmも長く、全高は50mm高く、全幅も30mm広い。3シリーズに比べると完全にひと回り以上大きく、5シリーズとの中間というか、5シリーズに近いようなサイズである。

ホイールベースの延長は後席の居住空間の拡大につながり、足が組めるくらいの広さがある。3シリーズのセダンやツーリングとの決定的な違いだ。

ラゲッジスペースも広く、標準状態の容量は520リッターでツーリングに比べると25リッターも大きい。後席の背もたれが3分割式になっているのはツーリングと同じで使いやすい。

3シリーズグランツーリスモには、3機種のエンジンが搭載されていて、エンジンに応じて320i、328i、335iの3グレードがある。それぞれに標準のほか、ラグジュアリー、モダン、スポーツ、Mスポーツが設定されるのは3シリーズのセダンやツーリングと同様だ。

3機種のエンジンの動力性能はそれぞれ135kW/270N・m、180kW/350N・m、225kW/400N・mとなる。これは先に発売されている3シリーズのセダンやツーリングと変わらない。全車に電子制御8速ATが組み合わされるのも同じだ。

ボディが大きくなったことで、車両重量はやや重くなり、ツーリングに比べると大人一人分くらい重い。このため燃費もやや悪くなっている。328i同士で比べると、ツーリングがリッター15.2kmなのに対し、グランツーリスモは14.7kmにまで落ちる。

ただ、重量区分の違いから、エコカー減税はツーリングが50%の軽減なのに対しグランツーリスモは免税扱いになる。このあたりが日本の制度のおかしいところである。

3機種のエンジンすべてに試乗したところ、ボディが重くなったことの影響はそれなりに出ているものの、320iの動力性能でもグランツーリスモのボディに対して負けている感じはない。低速域でのトルクが十分に出ているためだ。

ツーリングではなくセダンに比べると150kgくらい重いので、走りの軽快さはセダンに及ばない。スポーティさという点でもはっきりした違いを感じる。でも320iで不満かといえばそうではなく、320iでも十分に良く走る。ただ、BMWらしい軽快な走りということなら328iを選んだ方が良いかもしれない。そんな感じだ。

328iなら動力性能に余裕が生まれ、アクセルを踏み込んだときのパワーの伸びが良くなる。6気筒エンジンを搭載する335iになると、一段と滑らかな吹き上がりとパワフルな動力性能によって余裕の走りが楽しめる。

動力性能よりも気になったのがフットワークだ。ホイールベースが延長されたことが影響してか、BMWらしい軽快さが薄れ感じを受けたからだ。重量配分がやや後輪側が重くなっていることも走りに影響を与えているようだ。軽快な走りよりゆったりした走りを求めるユーザー向けの3シリーズと考えたら良いのだろう。

320iツーリングに比べると、320iグランツーリスモの価格は23万円ほど高い設定。ツーリングとは異なる使い勝手と、後席の居住空間が欲しいユーザー向けの3シリーズといえる。本流になるのはセダンやツーリングで、グランツーリスモは選択肢のひとつという感じだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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