【東京モーターショー13】カーシェアとコクリエーション…新しい世代のためのモビリティづくり

自動車 ニューモデル モーターショー
MITメディアラボ所長伊藤穣一氏
MITメディアラボ所長伊藤穣一氏 全 8 枚 拡大写真

通信技術とインターネットビジネスの進化は交通環境をも大きく変化させた。これに伴いモビリティへの考え方が変化し、新しいモビリティ利用とデザイン方法が生まれている。

11月28日、「未来社会と未来の移動」をテーマにMITメディアラボ所長伊藤穣一氏と日産自動車日産デザイン総責任者の中村史郎氏が対談。話題は娯楽としての運転行為、カーシェアリング、さらにモビリティデザインにおけるコクリエーション手法に及んだ。

◆乗る楽しみは消えない 社会物理学からの指摘

伊藤氏は社会物理学の観点から、ハチと人間にはふたつのモードがあること切り口に、運転を楽しむことができるヒトの潜在的モビリティ指向の存在を指摘した。

その“ふたつのモード”とは、「組織の中で上手にコミュニケーションをとること」、そして「外で新しい物を発見すること」だ。行ったことのない所に行って新しいものを発見する。だから運転という行為のなかでもつまらない日常の運転がある一方で、冒険としての運転がありうる、と話した。後者に焦点をあててビジネス展開することが有効なのでは、と伊藤氏はアイディアを提起する。

◆セールスプロモーションとしてのカーシェア

さらに伊藤氏は、乗る楽しみを提供する手段としてカーシェアリングが挙げる。このカーシェアリングについて、米国では日本とは違う有用性が認められているようだ。

伊藤氏いわく、欧米ではカーシェアは(企業にとって)セールスプロモーションの一環だという。また(消費者にとって)自分では買えないようなクルマを使うチャンスでもある。このような場面では借りることがひとつの愉しさ、喜びとなる。これに対し日本では未だ実用重視の色が強い。カーシェアを通じて「普段できないような喜びを提供できたら」と、中村氏は語る。

コクリエーションから学んだ「スモールギャザリング(Small gathering)」の力

最後はモビリティデザイン傾向とその有効な手法について議論された。中村氏によれば、クルマのデザインでいうとエクステリアデザインは大きな変化はないが、インテリアでは変化に終わりがないという。インテリアでは特にカタチ、素材の要求が強く、ユーザーの生活様式の反映が重要だと中村氏は強調する。

ではこのインテリアデザインの変革はどのように進めるのか。中村氏は、日産自動車が取り組んだ事例として「コクリエーション」という手法を紹介。コクリエーションとは「ひとつの価値観をもった人たちに集まってもらいアイデアをいただきながら作る」ことだ。この際中村氏は「グローバリゼーションとともに進むスーパーカスタマイゼーションの流れ」に改めて気づかされたという。

以前はメディアによって主導されていた消費者の価値観は、「いまでは物理的には分散しているネットのなかの変わり者たちが仲間を見つけ連帯する時代」だ(伊藤氏)。したがって価値観はちらばりながらも、あるところで固まる。それに従い、いわゆる「普通の人」のマーケットは縮小傾向にある。2001年からヒット曲の売り上げが下がっていることもその論拠として挙げられた。

しかし、現状ではまだまだネットでの声が物理的な社会でのローカルディーラーに届いていない。「ネットからボトムアップで声を上げる人々にとってのサプライチェーンができると素敵ですね」と伊藤氏が展望を述べ対談をおえた。

《北原 梨津子》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 三菱『デリカミニ』がフルモデルチェンジ!「やんちゃ坊主」感アップ、走りも三菱らしく進化
  2. 世界初、個人所有できるレベル4自動運転「ロボカー」誕生、2026年に納車開始
  3. 【日産 ルークス 新型】「ルークスはパイクカー」開発デザイナーが立ち返った“軽ならではのデザイン”とは
  4. 日産『ルークス』新型、クールなカスタマイズモデル「AUTECH LINE」が登場! 専用の黒内装も
  5. 『マツダ3』、米2026年モデルで「ハーモニックアコースティクスオーディオ」を標準化
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る