【ハイエース開発主査に聞く】大胆デザインに隠された、“裏コンセプト”とは

自動車 ビジネス
包原功主査
包原功主査 全 21 枚 拡大写真

発売10年目にも関わらず、未だに人気が衰えない200系『ハイエース』。人気車種のマイナーチェンジを実施するとなれば、マイチェンの開発担当主査であっても、200系の開発初期の背景も把握しているはずだ。

実は筆者は100系ハイエースのユーザーだった経験もあり、200系がデビューした時には、そのスタイリッシュさに驚いた記憶がある。ボクシーでシンプルにまとめられながら、モダンで力強いデザインはまるでアメリカのフルサイズバンのようにタフな印象も放っていた。そこで包原主査に200系ハイエースのデザインコンセプトを改めて訊ねてみた。

包原氏(以下系省略):イメージとしてはツールボックスや堂々とした印象、機能美を盛り込むといった要素が挙げられていたと思います。そんな通常のコンセプトとは別に、デザイン担当には白金台のブティックが配達に使ってもしっくりと溶け込むような商用車にしたい、という目標もあったようですね。都市の景色の一部になるクルマを目指して開発された、とも聞いています。

「商用車だから、これでいい」ではなく、詰めるところは詰めたけれども、デザインにもこだわりました。誰だって、カッコ悪いと思うようなクルマは買いたくなりませんよね。スタイルもより良くしたいというのがあって、それが今のデザインに結びついていった、ということです。

ベストセラー車は街の景色も考慮する

白金台のデリバリーバン。ハイエースのスタイリング開発にそんな裏のコンセプトが存在していたとは!「どうせ作るならカッコいいクルマを作りたいですからね」。包原氏の言葉から、開発者らの「クルマが好きだ」という気持ちが伝わってきた。

ではトヨタから見て、そんな200系ハイエースのどこがユーザーには魅力的に映ったとみているのか。これまでの大ヒットの理由をどう分析したのだろうか。

包原:大きく分けて2つの理由があると思っています。1つ目は、やはり世界最大効率のパッケージですよね。我々の方でアレンジをするのではなく、とにかくスペースをとりました、後はお客様が好きなように使って下さい、という形で提供したところが評価されたのではないのかな、と。

これはスタイリングにも現れていまして、室内を最大限に大きくとると、外側の形状もああいう風に真四角に近付いていくのです。無駄がない分、飽きの来ないデザインにもなりました。今でも街で200系ハイエースを見かけて、これが9年前のクルマだとはなかなか思わないですよね。

パッケージの徹底追及

歴代のハイエースはどれも5ナンバーサイズにこだわり、その中でも室内容積の確保にこだわってきた実用車だった。にも拘わらず、200系は原点に立ち返るが如くパッケージングをとことん追求し、道具としての性能を極めたのだ。

包原:壊れない、ということがもう一つの理由です。開発に当たって営業サイドから言われたのが、このクルマで生計を立てている方が非常に多い。だから「故障して使えない、という状況になると非常に困る」ということでした。海外ではバスとしてスーパーロングを使っている国が多くて、例えばタイではシェアで91%を占めています。家を買うのと同じくらいの金額のハイエースを購入していただいています。そして毎日お客さんを乗せて、その稼ぎで生活をしている方々がいらっしゃる。

いくらクルマが安くても、壊れて動かない日が1日あっただけで大変ですし、それが2、3日になれば死活問題になる。世界中の販売店を回ってお客さまの声を集めたのですが、「ハイエースは壊れない」と、どこの販売店に伺っても言われますから、そのあたりは日本でも間違いなく販売に影響していると思いますね。

だからこそ、マイナーチェンジではどこをどう変更するか、非常に気を使うことになったとも言う。実際の作業でも様々な制約が、包原氏らを悩ませたそうだ。次回はいよいよ、そんな開発作業上での苦労話に切り込む。

《高根英幸》

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