【ハイエース開発主査に聞く】外気温計に込められた主査の想い

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トヨタ ハイエース
トヨタ ハイエース 全 10 枚 拡大写真

これまでの話で『ハイエース』のマイナーチェンジには、様々な制約があったことが見えてきた。ここでは開発主査である包原氏にエクステリアに続いてインテリアや機能に関する変更点を聞いていく。

何を基準に変更内容を決めていったのか

これまでに200系を購入したユーザーの声などが反映された部分はあったのだろうか。

包原氏(以下敬称略):マイナーチェンジの内容を検討するに当たって、全国のディーラー、世界中の販売店を見て回りました。ハイエースを物凄く売っている営業マンの方がほとんどのディーラーにいて、中には「ハイエースを売って店長になれました」と言ってくれる人もいました。誰もが喜んで話をしてくれるだけでなく、特に海外では「ハイエースを作ってくれてありがとう」と感謝されるのです。そんなこと、これまでのクルマ作りではなかったことでしたね。

販売している営業マンからもハイエースへのこだわりは伝わってきた、と包原氏は言う。それだけ高く評価されている現行モデルだけに、ヘタにいじる訳にはいかなくなる。では、包原主査はどこに手を加えたのか。

包原:インテリアに関しては快適性と高級感を高めることに主眼を置きました。この200系からインパネを上下2色に分けて表面のシボも変えるなど、これまでの商用車にはない工夫がされていたのですが、今の感覚ではやや無機質すぎる印象だったので、質感を出したいと思っていました。そこで黒の部分はレザー風の表皮にして上質感を高めています。シルバーの塗装も光沢感を高めています。ただし海外では必ずしも変更を望まない。現在のハイエースに満足してくれているので。それよりも変更によるコストアップを気にするのです。

トヨタ車の中でも極めて複雑なグレードと仕様

ハイエースはすべてのグレードで採用する装備と、一部のグレードで採用する仕様を分けて考える必要が通常のモデル以上に複雑になったそうだ。さらに主査とデザイナーによる、それぞれのこだわりがインテリアには盛り込まれていた。

包原:実はインパネのデザイン変更は、デザイナーからの希望でもありました。私はそこまで考えていなかったのですが、デザイナーが「チャレンジしたい」と言ってきたので、任せてみることにしたのです。ただしマルチインフォメーションディスプレイを盛り込んだのは、私の考えです。燃費を気にされる傾向が強いこともありますが、一番の理由は外気温計を付けたかったからですね。乗用車ではエアコンの表示パネルに組み込まれることも多いのですが、路面の凍結を知らせるのが目的なら、やはりメーターパネルに組み込みたい。ウィンタースポーツを楽しむ人もいれば、当然寒冷地で生活する人もいるので、幅広い人に役立つ装備だと思います。

かつてアウトバーンで凍結路面による多重事故を目の当たりにしたこともあって、どこの地域であっても必要な装備だと信念を持っている、と言う。だからマルチインフォメーションディスプレイの表示は、燃費の項目は切り替えることができるが、外気温は常に表示し続けるようになっている。それに加えてインパネで目に付くのは、オートエアコンのデザインを一新したことだ。

オートエアコンのデザイン刷新理由

包原:オートエアコンのスイッチパネルを一新したのは、より操作性を高めるのが狙いでした。これまでのエアコンは風量と温度の調整スイッチが同じ形状だったのです。しかも位置が下にあるので手も届きにくい。それではブラインドで操作した時に間違える可能性が高いので、レイアウトを見直して温度をロータリースイッチに変更しました。風量はオートになっていれば、操作する頻度は少ないですから、頻度が高い温度の方を優先しています。

これによってオートエアコンの使い勝手はかなり向上している。マニュアルエアコンもファンをダイヤルにして、温度と分けて配置することで使いやすくした。目に入りやすい外気温計と、手探りでも操作できるエアコン。これだけでも新しいハイエースが、オーナーにとってどれだけ優しいクルマになったかが分かる。

と、ここでエクステリアデザインにも実はさり気ない機能面での工夫があると言うではないか。再び外装面に話を戻すことになるが、ここは聞かずに過ごす訳にはいくまい。次回はこだわりのエクステリアデザイン、細部に切り込んでいく。

《高根英幸》

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