JAXA 世界の雨を観測する『GPM/DPR』衛星の詳細を発表 2月種子島で打ち上げ

宇宙 科学
GPM/DPR衛星
GPM/DPR衛星 全 7 枚 拡大写真

2014年1月14日、JAXA 宇宙航空研究開発機構は、2月28日にH-IIAロケット23号機で鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げを予定している全球降水観測計画GPM主衛星『GPM/DPR』の詳細について発表した。

GPM/DPRは、人工衛星で地球全体の降水量を観測する「全球降水観測計画 GPM」の主衛星となる衛星。1997年から活動している熱帯降雨観測衛星「TRMM(トリム)」搭載の降雨レーダーを発展させた「DPR」レーダーを搭載し、同時に2種類のレーダー波を使って精密に降雨を観測する。Ka帯とKu帯、二周波のレーダー波を使うことで、雨粒の大きさが異なっても正確に雨の強さを検出でき、1時間に0.2ミリの弱い雨までとらえることができる。DPR開発を担当したNICT 情報通信研究機構 電磁波計測研究所の井口俊夫所長は、「米国48州であれば、1時間に0.2ミリの雨を見逃す割合は0.8パーセントと、ほとんどの雨を検出できる」としている。また、TRMMが南北緯度35度までの熱帯から亜熱帯の地域で観測を行ったのに対し、GPM/DPRは南北緯65度まで観測域を拡大している。北半球では、北緯65度はカナダ、ロシア、スウェーデンやアイスランドなどの地域だ。GPM/DPRでは、降雪や高緯度地域の特徴である弱くしとしと降る雨も観測できるようになった。

GPM計画では、TRMMに加えて10以上の世界の世界の地球観測衛星を副衛星として、国際協力のもと地球全体の降雨量を準リアルタイムでデータ化する。日本の第一期水循環観変動測衛星「GCOM-W1(しずく)」や、米太陽会期局のNOAA気象衛星16号、18号、19号、インド・フランス共同運用のメガトロピーク衛星などが含まれる。このうちGPM/DPRとTRMMはレーダー降雨観測機器を持つが、他の副衛星は、雨粒から放射されるマイクロ波をとらえるマイクロ波放射計を搭載した衛星だ。レーダー波を使ってアクティブに雨の強度を観測するGPM/DPRは、受動的にマイクロ波を観測する機器よりも精度の高い観測が可能で、マイクロ波放射計搭載衛星の精度を向上させる基礎となるデータを提供する「物差し」の役割も担っている。

JAXAでは、すでにTRMMの熱帯・亜熱帯地域の降水量データなどを中心に、世界の雨分布速報が見られる全球合成降水マップ「GSMaP」を公開している。GSMaPは衛星からのデータ更新からおよそ4時間後のデータを1時間ごとに更新して表示する。GPM/DPR打ち上げにより、降水マップは緯度の高い地域まで提供されることになる。JAXA地球観測研究センターの沖理子技術領域リーダによれば、GSMaPの利用登録は世界81カ国に上る。GPM/DPRのデータを気象庁、独立行政法人土木研究所などが利用すると表明している。JAXA GPM/DPR小嶋正弘プロジェクトマネージャは「雨雲を味方にせよ」と、気象予測から水害対策までGPM/DPRの降雨量データが幅広く利用できるとした。

GPM/DPRはJAXA(NICT)が衛星搭載レーダーDPRを、搭載のマイクロ波放射計と衛星本体をNASAが開発し、運用はNASAが担当する。2月28日の打ち上げ後、2か月ほどかけて搭載機器のチェックアウトを行い、その後2段階にわたって地上の降雨データと比較するなどの試験を実施する。試験的なデータは3月中にも取得し、ユーザーが利用できるデータはおよそ6カ月後、9月ごろから提供されるとのことだ。

《秋山 文野》

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