まもなく消える銀座線の「非暖房車」

鉄道 テクノロジー
新型車両への置き換えが進行中の銀座線01系。初期に製造された車両は今では珍しくなった「非暖房車」だ。写真は冷暖房装置を搭載した第26編成(左)と冷房装置のみ搭載した第06編成(右)。
新型車両への置き換えが進行中の銀座線01系。初期に製造された車両は今では珍しくなった「非暖房車」だ。写真は冷暖房装置を搭載した第26編成(左)と冷房装置のみ搭載した第06編成(右)。 全 7 枚 拡大写真

現在の旅客用鉄道車両は、外気にさらされるトロッコ列車など特殊な車両を除き、空調がほぼ完備されている。冷房装置を搭載していない車両(非冷房車)は北海道を中心に若干残っているが、暖房装置を搭載していない「非暖房車」は、極めて珍しい。

ただ、極めて珍しい存在ではあるが、東京の人にとっては身近な存在であるといえるかもしれない。東京地下鉄(東京メトロ)が運営している日本最古の地下鉄・銀座線で、非暖房車が運用されているからだ。

銀座線では現在、1983年から1997年にかけて製造された01系と、2012年に登場した1000系が営業運転で使用されている。このうち01系は、1983~1987年度に製造された初期の車両が、冷暖房装置を搭載せずに登場した。

01系の先頭部と側面には、形式を表す「01」に続いて車両番号を表す3桁の数字が記載されている。この番号の下2桁が「01」~「23」なら、冷暖房装置を搭載しなかった初期車だ。「24」以降の後期車は冷暖房装置を搭載し、初期車も後に冷房装置を追加する改造を受けたが、暖房装置は今に至るまで設置されていない。

旅客用鉄道車両の空調は、戦後になってから本格的に普及した冷房装置に対し、暖房装置は戦前の段階で導入が進んでいる。01系の初期車が製造された頃は、冷房装置はともかく暖房装置は「搭載されていて当たり前」の時代になっていた。なぜ、暖房装置が搭載されなかったのか。

東京メトロによると「銀座線はほとんどがトンネル区間であり、冬場であってもトンネル内は低温になることがありませんでした。そのため、暖房を使用せずとも車内が低温にならないので、(01系の導入にあたっては)以前の車両と同様に暖房措置を搭載しない方針といたしました」という。

実際に1月28日早朝の5~6時台、100円ショップで購入した温度計を携え、非暖房車に乗ってみた。列車に乗るまでは温度計を外気にさらしていたこともあり、渋谷駅で乗車した直後こそ12度を示していたが、その後は徐々に上がって20度に達したところで安定した。安物の温度計ゆえ、やや不正確かもしれないが、体感上も寒さを覚えることはなかった。

逆にいえば、後期車でも暖房装置を搭載する必要はなかったはずだが、銀座線は渋谷駅付近など、ごくわずかながら地上に出る部分もある。このため「地上部に(車両を)留置した場合、車内は低温になってしまう」(東京メトロ)ことから、後期車には暖房装置を搭載。その一方、地上部に車両を留置する編成数は限られているため、初期車を改造した際は冷房装置のみ追加し、暖房装置は搭載しなかった。地上部には可能な限り、非暖房車を留置しないようにしているという。

銀座線では現在、冷暖房装置を搭載した1000系の導入が進められており、2016年度までに非暖房車を含む全ての01系が1000系に置き換えられる予定だ。東京メトロは01系の今後について「(自動車の車検に相当する)定期検査の工程を考慮して廃車計画を立てております」としており、非暖房車が優先的に廃車となることはなさそうだが、いずれにせよ2016年度までには非暖房車が消滅することになるだろう。

《草町義和》

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