【インタビュー】アイドリングストップ車/一般車両対応の万能長寿命バッテリーはなぜ開発できたのか…パナソニック カオスPRO

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パナソニックストレージバッテリー企画部部長の松本剛氏
パナソニックストレージバッテリー企画部部長の松本剛氏 全 6 枚 拡大写真

「アイドリングストップ(IS)」は、発表当初こそCO2削減になっても燃費はむしろ悪くなるのではないか、と効果を疑問視する声さえあったが、いまや採用する車種も増え、車の環境性能を向上させる技術のひとつとして定着した感がある。

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IS車は多くの場合、IS機構のない一般車(非IS車)とは異なる専用バッテリーが必要だ。しかし、IS車専用バッテリーは店頭などで見かける機会は少なく、なかなか最適なモデルを探しづらいというのが実情のようだ。また店舗側にとっては、IS車用バッテリーを品揃えするために場所を割かねばならず、在庫コストものしかかるという問題がある。こうしたエコカー普及の過渡期にあって、パナソニックストレージバッテリー(PSB)は、同社の「カオス(caos)」シリーズにIS車に最適化しながらも普通の車にも搭載可能な 「カオス PRO」を販売している。

カオス PROでIS車/非IS両対応を実現できた理由・経緯と搭載によるメリットなどについて、同社企画部 松本剛部長 、マーケティング企画グループ 商品企画チーム 秋岡真弥課長の両名に話を聞いた。

◆バッテリーの負担が大きいIS車

----:「カオス PRO」は、IS車にも非IS車にも使えるバッテリーと聞きました。そもそも、IS車は通常の鉛バッテリーではだめなのですか。

秋岡氏:はい。アイドリングストップに対応した車は、非IS車よりエンジン始動のためのセルモーターの使用頻度が圧倒的に高いのです。非IS車は走行時だけでなくアイドルアップして充電が期待できますが、汎用バッテリーでアイドリングストップを行うと充電が追いつきません。したがってIS車はバッテリーにとって非常に過酷な条件にあるといっていいでしょう。そのためIS車には、急速な充電に対応し、充電・放電を頻繁に繰り返す条件でも耐久性の高いバッテリーが求められます。

----:IS車に専用でないバッテリーを搭載するとどうなりますか。

松本氏:使用条件にもよりますが、およそ半年も使うとバッテリーが上がってしまうでしょう。内部の劣化も通常より進んでいるので、充電しても使えない可能性もでてきます。逆に標準車にIS車専用のバッテリーを搭載すると、すぐに充電されてしまうので常に過充電の状態で使うことになり、これもよくありません。

◆IS車/非IS車、エンドユーザー/店舗どちらにもメリットもたらす万能バッテリー

----:カオスシリーズにIS車/非IS車に両対応したカオス PROをラインナップした理由は。

松本氏:PHV、EV、FCなど次世代環境車への流れは今後も続くと思われます。現在の車にとって環境性能というのは無視できない存在です。いっぽう通常のガソリンエンジン車にとっては、燃費向上のための重要な機能としてISは位置づけられています。すでにどのメーカーもIS機構を搭載したモデルを用意するなど力をいれており、2018年までには全体の30%がIS車になるとも言われています。このような市場動向から、IS車専用のバッテリーをメーカー純正のOEMだけでなく、アフターマーケットに展開することは重要な意味を持つと考えました。

----:なるほど。

松本氏:また、流通や量販店にとっては通常のバッテリーに加え、IS車専用のバッテリーまで扱うとなると、管理コストが上がってしまうことが悩みの種でした。もとより規格、容量、ターミナルの位置などが異なる多数の在庫が必要なところに、IS車専用という分類が増えるのは避けたいところでしょう。IS車、非IS車と共用できるバッテリーならこの問題は解決できます。逆にそのような製品を用意しないと、IS車や環境性能車も普及していかないし、新しい市場も広がらないでしょう。

----:量販店などの反応はどうですか。

松本氏:量販店や修理工場、流通卸などでは、どちらか専用という管理をしないで済むので扱いやすいと好評です。すでに50社以上の事業者の取扱があります。

◆極板材料の改良で急速充電対応/長寿寿命を実現

----:ではIS車/非IS車両対応を実現できた技術的な背景もお聞かせください。充電性能や耐久性について、カオスPROにはどのような工夫がされていますか。

松本氏:基本は鉛バッテリーですが、IS車に対応するために急速充電性能を向上させ、耐久性を保つために導電性の高いカーボンを配合した極板材料「パワフルペースト」や添加物の配合など、素材面での改良を加えています。またパワフルペーストの改良により、過充電を抑止でき非IS車搭載時でも長寿命を実現しています。従来製品との比較ですが、カオスPROは、充電性能で2.5倍、寿命では1.8倍となっています。カオスPROを標準車に載せた場合、寿命は3年から4年と思ってください。IS用はこれより少し短くなります。

----:通常バッテリーは2年くらいで交換とも言われているので、それよりは長持ちするということですね。

松本氏:バッテリーの素材など基本的な性能向上も開発ポイントでしたが、じつはIS車の制御方法にはメーカーごと、車種ごとに違いがあります。どの条件でエンジンを停止させるかなど、制御方法が変わると停止・始動パターン、つまり充放電のパターンも変わってきます。どのような車でも、最適な性能をだせるように、添加物の配合や素材の組み合わせにも苦労しました。

----:一般の消費者にとってカオスPROのメリットはどのような点にありますか。

秋岡氏:カオスシリーズは、もともと新車装着の純正品よりも高性能な付加価値商品としてラインナップされている商品です。IS車のオーナーにとっては、新車装着の純正品よりさらに性能のよい交換部品が選べるということではないでしょうか。従来のカオスも併売されるので、標準車のオーナーにとっては、これまで通りの高性能バッテリーに、さらに耐久性向上が期待できるカオスPROが選べる形にラインナップされたといえます。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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