日産は2013年12月にベストセラーミニバン『セレナ』を、2014年1月には『エルグランド』をマイナーチェンジした。さらに2月13日のスーパーハイト(モアスペース)軽自動車『デイズ ルークス』発表で、出揃った「日産ミニバン3兄弟」。
デザインの刷新だけでなく、安全機能を充実させたセレナ、居住性の向上をはかったエルグランド。そして活況を呈するスーパーハイト市場に名乗りを上げた新型デイズ ルークスの戦略。日産ならではのミニバンにはどのような特性と魅力があるのか。各車のプランナー、デザイナーに行った「10の質問」。
定番人気となりつつあるハイウェイスターのデザインとブランド性について、『デイズ ルークス』を担当したプロダクトデザイン部の倉岡亨一デザイン・ダイレクターと『エルグランド』『セレナ』を担当した秋山芳久デザイン・ダイレクターにジャーナリストのまるも亜希子氏が聞いた。
Q.3 ハイウェイスターを設定する理由とは?
A.3 存在感の強調、よりワクワクするような表現、既存のカスタム系イメージ打開…各モデルによって役割は異なる。
日産らしさのひとつ
まるも氏(以下敬称略):ハイウェイスターは、どの車種でも人気が高く、ひとつのブランドになっていると感じます。まず、ハイウェイスターがどのような位置づけになっているのか教えてください。
倉岡氏(以下敬称略):デイズ ルークスの場合は、いわゆる「カスタム系」モデルです。『ルークス』でもハイウェイスターをメイン車種として打ち出していましたが、今回はスタンダードが前ルークス ハイウェイスターくらいの感覚。新型ではもう少しスポーティでしっかりしたものにしようと考えました。
秋山氏(以下敬称略):じつは現在、エルグランドを購入する人のうち9割近くがハイウェイスターを選んでいるのです。セレナでは6割以上。どちらもいちばん売れる看板グレードになっています。
まるも:それだけハイウェイスターが日産らしいモデルだと感じているユーザーが多いということなのでしょうね。
それぞれに異なる設定理由
まるも:デザイナーのみなさんはよく「ハイウェイスターらしさ」とおっしゃるのですが、なかなか具体的なイメージが語られません。この機会にその「らしさ」について教えていただけますか?
倉岡:ライト感覚のエアロパーツによるスポーティな印象、メッキパーツによる押し出しの強さとリッチな感覚、それにブラック基調のインテリア…といったあたりが、わかりやすい共通点でしょうか。
秋山:でもハイウェイスターとして統一されたコンセプトや考え方があるわけではないのです。エルグランドの場合、もはやハイウェイスターがエルグランドそのものになっていますし、セレナでは「欲しい装備をセレクトしていったら、自然とハイウェイスターを選ぶことになった」というユーザーが多い傾向にあります。
倉岡:軽自動車のカスタム系といえば装備や仕様、外観の方向性がだいたい決まっているものですが、そうではない新しい表現を狙ったのがデイズ ルークス ハイウェイスターです。
まるも:各モデルごとにハイウェイスターを設定する理由が違っていて、「ハイウェイスターとはこういうものだ」と明確に定義づけされているわけではないのですね。
ユーザーが育てた価値
倉岡:ルークスは幅が狭くて背が高いので、安定感を与えるスタイリングにしたかった。ですからセレナやエルグランドのフロントエンドでは縦方向の線も目立っていますが、ルークスでは横方向の線の流れを強調しています。
秋山:エルグランドは「キング・オブ・ミニバン」にふさわしい存在感あるスタイリングを訴求しました。セレナの場合は、スタンダードモデルよりもワクワク、ドキドキさせるものを追求しています。
まるも:形を同じにするのではなくて、それぞれの必要に合わせたデザインをしている、ということですか。それでも結果的に、共通した世界観を感じられるというのはすごいですね!
秋山:ハイウェイスターとしてスタイリングを統一するのは、じつはそう難しくないのです。でもすべての車種で同じ形状にすることがデザインの目的ではありませんからね。
倉岡:これまで各車で設定しているうちに、お互いに影響しあって全体的な方向性が定まり、共通したイメージが生まれてきた、ということはあるかもしれません。
秋山:統一感を感じていただけているのは、そうしたこれまでの積み重ねがあるからでしょうね。私たちが意図したものだけではなくて、ユーザーが作り上げてきた「ハイウェイスターの価値」というものがあるのではないかと思います。
《聞き手 まるも亜希子》