【アクセラ開発者への10の質問】Q1.開発時は本当にライバルを想定しなかったのか?

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マツダ・アクセラ開発主査の児玉眞也氏
マツダ・アクセラ開発主査の児玉眞也氏 全 16 枚 拡大写真

マツダが2013年11月21日に発売した新型『アクセラ』。発売から4ヶ月での受注台数は2万5000台を超える好調振りを見せている。

同社の"SKYACTIV TECHNOLOGY"や“i-ACTIVSENSE”を搭載し、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドと3種類のパワートレインをラインナップ。さらに、新世代カーコネクティビティシステム“マツダコネクト”を採用した新型アクセラの誕生秘話と魅力を探るべく、開発陣に「10の質問」を行った。

Q1.開発時は本当にライバルを想定しなかったのか?
A1.具体的なライバルは設定せず、あくまでも“理想のクルマ”を目指して開発した

マツダ『アクセラ』の開発主査が、これまでの猿渡健一郎氏から児玉眞也氏へと受け継がれた。児玉氏はこれまで開発の全方位を統括していた猿渡氏の下で、補佐的な仕事を担ってきた人物である。猿渡氏との二人三脚でアクセラを作り上げただけに、アクセラの開発においてはその一部始終を知り尽くしている。

他車評価は自分たちの位置を確認するため

かつて猿渡氏が語っていた「開発過程の中でライバルは想定していない」という言葉を思い出した。それを疑うつもりはないが、児玉氏に今一度確かめてみたいと思う。本当に競争著しいCセグメントで、ライバルを意識せずにアクセラは作り上げられたのだろうか。そうであっても、ベンチマークにしたクルマはあったはずだ。それはやはり、人気の輸入車Cセグメントらなのだろうか。

「そうですね、ライバルは想定していませんでした。実はベンチマークにしたクルマもないんです。マツダブランドとして参考にする対象はあります。でも実際の開発では、会社としての理想の方向性を決めたら、あとはそのプロジェクトはどうやって実現するかを考えるようにしています。アクセラは、あくまで理想のクルマを目指して開発したクルマなんです」(児玉氏)。

そうであっても他メーカーの商品車を評価することもせずに開発することは考えられない。すると児玉氏からは、より具体的な答えが返ってきた。

「当然、評価はするんですが、それは自分たちがどの位置にいるのか確認するためですね。相対的な評価をするために試乗することはありますが『CX-5』以降、個別の車種でのライバルとかベンチマークは設定していないんです。もちろん販売上のライバルはいます。それは国産車では『インプレッサ』や『プリウス』、輸入車であればVW『ゴルフ』やアウディ『A3』、ボルボの『V40』といったあたりですが、これはあくまで販売上の話です。こうした車種と細かい数値で比べて、勝った負けたと判断するのは違うのではないか、と。CX-5以降、そうしたやり方は止めよう、ということになったんです」。

幅広いラインアップ、ユーザーが重視するのは…

そうやって作り上げられたマツダ アクセラ。発売されて4ヶ月が経過しようとしているが、非常に販売は好調なようだ。すでに受注台数は2万5000台を超えると言う。各エンジンバリエーションの販売比率は、想定していた比率と実際に違いはないのだろうか。

「ディーゼルは想定通りの反応ですね。15%狙いで今のところ13%といったところです。想定より売れているのは1.5リットル車です。ただMTの比率は15%強、20%まではいっていないですね」(児玉氏)。

これは計画より販売台数が多いことを考えれば、相当な人気だと判断することもできる。MT車が選べなくなってきている昨今、MTでドライビングを楽しみたい少数派のユーザーはアクセラを選択しているのだ。その反応はディーゼルの販売比率にも強く現れていると言う。

「ディーゼルは3割弱がMTです。これは『アテンザ』と比べても高いですね。今は想定した販売比率に対して1.5リットル車が高く、ハイブリッドは低いという状況です。ハイブリッドの試乗車を供給するタイミングが遅かったのと、認知度がまだ低いのが原因だと思っています」(児玉氏)。

それでもハイブリッド車も想定以上に売れているのだから、状況としては嬉しい悲鳴、といったところか。ハイブリッド以外の選択肢を求めてマツダ車を選んでいるから、そこに来たユーザーはアクセラの走りに、燃費に、驚き喜んでいるのだろう。ハイブリッドでなくても燃費がいい、燃費がいいのに走りが楽しいクルマがあることに気付かされたユーザーがいる証しとして、児玉氏が面白い話をしてくれた。

「他社のハイブリッド車に乗っていた人が、マツダのディーラーへアクセラのハイブリッドを試乗しに来たんですが、結局アクセラの2リットルガソリン車を購入されたんです。これが1台だけならレアケースなんですが、これまでに3台はそういうケースがあったんですよ」。

アクセラの中でも、カタログ燃費では一番数字の低い2リットルガソリンを選ぶ。それは燃費よりも選ぶべき要素の大切さに気付いた、ということか。ディーラーでの試乗で2リットルガソリンの実燃費の良さに満足して、なおかつトルクの豊かな走りで選んだのだろうか。

そんなアクセラの魅力は、じっくりと走らせ、また開発エンジニアの方々に話を聞くことでさらに鮮明に浮かび上がってきた。

《高根英幸》

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