ホンダは大阪モーターサイクルショー、バンコクモーターショーに続き、東京モーターサイクルショーで近日発売予定の『NM4』を公開した。
NM4で目を引くのは、これまでコンセプトモデルでしか見たことのなかった大胆なスタイリングだ。このデザインの意図を開発担当者のデザイナーに聞くことができた。
「現状に一石を投じられるようなモデルにしたかったんです」と語るのは、NM4開発プロジェクトでLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)を務めた本田技術研究所二輪R&Dセンター熊本分室の三倉圭太研究員。「既存のオートバイファンに訴求する商品開発だけでは、未来がありません。もっと一般の若い人に興味を持ってもらい、楽しさを知ってもらうにはどうしたらいいか。そう考えて生まれたのがNM4なんです」
スクーターのようにメカニズムが露出せずボディで覆われているのは「よくあるオートバイらしさ」に頼らないでスタイリッシュさを実現するため。「スタイリングでは普遍的な未来感が持つ魅力を表現しました」という。オートバイに詳しくない一般の人が見ても「未来の乗り物」だと感じる造形を目指した、というわけだ。
たしかに未来的だが、ここまで大胆なスタイリングがいきなり発売予定モデルとして登場してきたことには驚かされる。「開発メンバーが作りたいものを作った、ボトムアップ提案のプロダクトアウト商品だからです」と三倉研究員。「とにかく新しい商品を作ろうよ、という動きが社内であったので、最初はデザイナーと小さなチームを作って提案しました。その後に商品化が決まったんです」
ではデザイナーはどんなデザインスケッチを描き、提案したのだろうか。「いえ、プレゼンテーションに使うような綺麗なスケッチはまったく描いていません。キーとなるラフなスケッチを描いたらすぐに走行プロトタイプを作って、それで提案したんです」と説明するのは二輪R&Dセンターデザイン開発室の西本太郎研究員。
だから商品化が決定した後も、基本的なデザインはほとんど変わっていないという。「このカタチは絶対に守り抜くんだ!というのが、量産モデルのデザイン開発の大きなテーマのひとつでした」と説明するのは二輪R&Dセンター熊本分室で三倉研究員を補佐した内田聡也研究員。初期のデザインをただ守るだけでなく、アニメやゲームのメカデザインに詳しいクレイモデラーのアイデアも反映させながら、スタイリングを煮詰めていったという。
このためエンジンやDCTの基本的な部分こそ『NC750』から流用できたものの、フレームはまったく新規にデザインしなおすことになった。乗り易いと評判のNC750よりもさらに座面は低くなり、アメリカンモデルのようなライディングポジションとなっている。これはスタイリッシュさのためだけでなく「初心者でも扱い易いように」という配慮のためでもあったとか。
ただし「まっすぐ走るだけのクルーザーではありませんよ。峠を攻める、とまではいきませんが、コーナリングも楽しめる乗り味に仕上げました」と内田研究員。「このデザインは、オートバイマニアの中には抵抗感を覚える人もいるかもしれません」と漏らす。しかしそれ以上に「未来感のある、かっこいい乗り物」と感じる非オートバイファンは多いはずだ。