アリアンスペース イズラエルCEO「小型衛星の打ち上げ競争激化」

宇宙 企業動向
就任2年目となるアリアンスペース社 ステファン・イズラエルCEO
就任2年目となるアリアンスペース社 ステファン・イズラエルCEO 全 4 枚 拡大写真

2014年4月9日、仏アリアンスペース社のステファン・イズラエルCEOが来日。就任2年目となる2014年には、同社の記録となる1年に12機の打ち上げを予定しており、今後の展望と商用衛星打ち上げ市場について語った。

超小型地球観測衛星の打ち上げ競争激化

今月、4月28日にはイタリア開発による小型固体燃料ロケット『VEGA(ヴェガ)』の3回目となるカザフスタン初の地球観測衛星「HZZ-HR」打ち上げを予定している。衛星は旧アストリウム(現エアバス ディフェンス アンド スペース)が製造し、高度およそ750キロメートルの太陽同期軌道へ打ち上げられる。今後は小型のヴェガに対応する地球観測衛星の需要が大きいとイズラエルCEOは説明した。現在、ヴェガは今後14機分の製造発注がすでに行われており、うち8割が地球観測衛星、そのほとんどがESA 欧州宇宙機関外からの打ち上げ需要だという。

静止商用衛星市場

アリアンスペース社の主力は、高度およそ3万6000キロメートルの静止軌道で稼働する商用の通信・放送衛星だ。世界で年に20機程度の需要がある商用静止通信衛星に対して、同社は7~8割(15機前後)のシェアと目標を持っている。主力のアリアン5ロケットは、静止衛星の中でも大型で長寿命の衛星に対応している。昨年、低価格のロケットで静止衛星打ち上げ市場に参入した米スペース Xに対しては「3回の打ち上げ中、成功は2.5回。これは第2段エンジン着火の失敗によるものだが、対するアリアン5ロケットは59回の連続成功をおさめている」とアリアンスペースの打ち上げ経験が築いた信頼性を強調した。

スペース Xは、静止衛星の中でも衛星搭載のエンジンにイオンエンジンなどの電気推進システムを搭載した、従来よりも比較的中型、小型の衛星を中心に受注の焦点を絞っているという。このクラスの衛星では競争が激しくなり、コスト面でもより魅力的になるように対応していると述べた。現在開発中で、2020年代に登場する予定の新型「アリアン 6」の打ち上げ費用は7000万ユーロを目指すとしている。また、電気推進システム搭載の衛星への対応も進めており、現行の「アリアン 5 ECA」もすでに対応可能だとのことだ。とはいえ、価格をアリアン 6の目標通りとしてもスペース Xのファルコン 9の公表価格約5600ドルよりは高い(搭載能力はアリアン 6の方が大きい)点について、それ以上の言及はなかった。

米国 政府系打ち上げ市場

今年3月、アメリカで開催された商用衛星市場に関する展示会のパネルディスカッション席上で、イズラエルCEOはアメリカ政府系衛星の打ち上げ計画「EELV」計画について、アリアンスペースなどの企業にも門戸を開放するよう呼び掛ける発言している。NASAの科学衛星や気象衛星だけでなく、防衛衛星の打ち上げも担うEELV計画に欧州の企業が参入する余地はあるのか。この点については「アメリカは門戸を閉じている。これは遺憾なことで、アリアンスペースであればコスト面でも、信頼性でも競争優位性のあるソリューションを提供できる。すでに、インテルサットなどアメリカの商用衛星オペレーターの打ち上げ需要に対してシェアを持っており、アリアンスペースが打ち上げる衛星の50パーセントは米衛星メーカーのもので、政府系プロジェクト参入の準備は整っていると自負している」と述べた。

《秋山 文野》

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