【マツダ アクセラスポーツ 20S 試乗】絶妙な味付けの足回り、バランスの良さ随一…高根英幸

試乗記 国産車
アクセラスポーツ 20S
アクセラスポーツ 20S 全 4 枚 拡大写真

アクセラスポーツの『15S』と『20S』、この2グレードはエンジンの排気量が違うだけと思っていたら、実際に走らせてみるとかなり乗り味が異なることに気付かされた。実はエンジン自体の重量差に加え、エネルギー回生の「i-ELOOP」を搭載していること、さらにはホイールも18インチとなり、車重は40kgほど重くなっている。

おまけにタイヤの低扁平化によってゴムのたわみが減っている分、衝撃を吸収しなければならないから、どうしてもサスペンションは柔らかめになる。これが15Sとは別物のような乗り味になった理由だが、マツダ車両開発本部長の副部長、松本氏が表現した、目指した乗り味への取り組みが興味深い。

「やっぱり物理の法則には逆らえません。アクセラの場合、ディーゼルと1.5リットルを同じ動きにするのは難しいんです。そこでハンドリングはステアリングを小さく切った時の動き、大きく切った時の動きがイメージとしてつながっていて予見できる、そこは同じにしようと努力しました。つまり目指している乗り味の方向性は同じで、それぞれのモデルで方向の角度、傾きを変えたという考えです」。

傾きは違うけれども乗り味の方向性は同じ。それがサードステップの人馬一体だと松本氏は語った。その言葉を裏付けるように、20Sは走りの印象を鮮やかに変えていった。

少し走っただけでは15Sとの違いが強く伝わってきた20Sだったが、じっくりと走らせているうちに違う感覚が生じてきたのである。当初サスペンションは路面からの入力に対してストロークが大きめという印象だった。ところが走り込んでペースが上がっていっても無駄な動きが非常に少ないのだ。気が付けばフロントタイヤはそろそろグリップの限界という領域にまでペースが上がってしまっていた。

そんな安定感の高いハンドリングは4人乗車でも変わらないのだから、いかにハンドリングのバランスを入念に仕上げられたか分かる。バランスの高さ、ステアリングを切った時の向きの変わり方は間違いなくアクセラならではの味わいだった。

これは2リットルエンジンを選ぶユーザーを想定した味付け、というのではない。アクセラの基本的なシャーシのポテンシャルにこのエンジン、車重をマッチングさせて最適化した結果が、20Sというクルマの乗り味だったのだ。

エンジンは低速から中速域のトルクが厚く、たとえ大人4人を乗せていてもまったく力不足を感じさせない。その上、加速させていくと4000~5000rpmのエンジン音がスポーティで気持ちいい。NA、ましてやこのエンジンが環境性能の高いエコなパワーユニットだということを忘れそうになる。考えてみれば4-2-1のエキゾーストマニホールドで燃焼室内の残留燃焼ガスを減らしているスカイアクティブは、高負荷時には新気をその分大量に吸い込めるのだから、スポーツエンジン並みのフィールやパフォーマンスをエコと両立していても、不思議ではなかったのだ。

単なるエコカーとは次元が違う走りを見せるのは、こうした徹底した性能への追求によるものであることは間違いない。すべてのエンジンバリエーションで明確な乗り味の違いを見せる一方で、そのどれもに唸らせられるような入念な仕上がりの高さを感じさせる。アクセラとは、そんなクルマだと、じっくりと走り込むことで気付かされた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

高根英幸/自動車&工業技術評論家(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
芝浦工大機械工学部卒。トヨタ直営ディーラーの営業、輸入車専門誌の編集者を経てフリーの自動車ライターに。クルマのメカニズムすべてに興味をもち、旧車からハイテクまで納得いくまで解析。ドライビングだけでなくメンテナンスやモディファイも自ら積極的に楽しむ。著書に「クルマのハイテク」(ソフトバンク・クリエイティブ刊)

《高根英幸》

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