【ダンロップ エナセーブ EC203 試乗】ベーシックタイヤながらグリップと転がり抵抗のバランス光る…斎藤聡

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ダンロップ エナセーブ EC203
ダンロップ エナセーブ EC203 全 18 枚 拡大写真

ダンロップからこの2月に登場した『エナセーブ EC203』は、同ブランドのタイヤラインアップの中でもっともベーシックな位置づけのタイヤだ。であると同時にエコタイヤでもあり、タイヤグレーディングでは、転がり抵抗AA、ウエットグリップcという高性能を備えている。

キー技術は3点ある。一つはマルチ変性SBRの採用。SBRというのは「スチレン・ブタジエン・ラバー」の略でタイヤコンパウンド用の合成ゴム=ポリマー。このポリマーの末端にシリカとつながりやすい変性基(≒継手)を化学的に配置することで、シリカを効率よくゴム分子末端と結びつけることができる。ポリマーの発熱は主に分子端の振動で起こるとされており、シリカを結び付け振動を抑えることで、発熱を抑え転がり抵抗を低減する効果が得られる。またシリカの特性により低温での柔軟性が出るため主にウエット時のグリップ性能が向上する。

キー技術の2つ目は、転がり抵抗を低減する末端変性ポリマーをサイドウオール(タイヤ側面)にも採用していること。こちらはカーボンと結びつきやすい変性基を使用することで、ポリマーの振動を抑え転がり抵抗を低減しているのだという。

3つ目は、真円プロファイルと呼ぶタイヤ(サイドウオール内部)の構造。タイヤのサイドウオールのたわみ形状を丸く設計することによってタイヤが変形するときの負荷の集中を防ぎ、不要なエネルギー消費を抑えて転がり抵抗を低減する。

◆一皮むいて抵抗の小ささを実感

さて試乗した印象だが、新品のタイヤを組んだ直後こそタイヤの路面への当たりがちょっと硬めで、ノイズもタイヤエッジの打音が聞こえていたが、タイヤの表面を軽く一皮むくと不思議なくらいスーッと硬さとノイズが少なくなった。

いわゆる当たりの付いた状態で走らせてみると、乗り味に意外なほど上質感がある。一つはタイヤが滑らかに転がっていく感触の気持ちよさだ。転がり抵抗が少ないタイヤならではのもので、もちろん純正タイヤも転がり抵抗はかなり厳しく作られていると思うが、その上を行く低転がり(抵抗)感がある。例えば交差点で信号が赤になって、ふっとアクセルを戻した時に、スーッと車速を落とさずにタイヤが転がっていく感覚や、70~80km/hくらいで高速道路を走っているときのアクセルの踏み代の少なさ、車速の維持の容易さなど。

また、その時の乗り心地の良さも、上質感を高める要因になっている。路面の凹凸やうねりを踏み越えタイヤがたわむように変形した時の変形の具合や反力の出方が滑らかなのだ。タイヤサイドウオールにかかる負荷が分散するため、こんな印象になっているのだろうか。

◆転がり抵抗とグリップ性能を両立、コンパクトカーに最適

真円プロファイルがそれほど都合よく効果を発揮するのか? という気もするのだが、比較的シンプルなケース(骨格)構造のベーシックタイヤでありながら、それをほとんど感じさせない乗り味の良さがある。

もちろんタイヤは転がり抵抗だけでなく操縦安定性も重要で、ある程度のグリップ性能は確保されていないと、走っていて不安感がぬぐえないのだが、その点もEC203は良くできている。コンパウンドグリップ自体はそれほど強くなく、必要十分といったところで、ハンドリングの味付も全体にマイルドな方向。ハンドルを切り出してもすぐにピクピクとは動かない。

カーブに向けてハンドルを切っていくと、タイヤの変形に合わせて穏やかかつスムーズに曲がる力が立ち上がってくる。タイヤの真円プロファイルが作り出すタイヤのなめらかな変形を上手に使って巧みにチューニングしている、そんな印象だ。ちょっとオーバーペース気味にカーブに入っても、案外粘ってくれる。

転がり抵抗の少ないタイヤはグリップ性が低いのではないか? というイメージを抱きがちだが、エナセーブEC203は転がり抵抗とグリップ性能を上手に両立させながら、しかも上質な乗り味も備えている。もちろん同社の『ル・マン』や『ヴューロ』には届かないが、コンパクトカーやファミリーセダン用の次のタイヤとして十分納得できる性能を備えていると思う。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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