【BMW i3 レンジエクステンダー 試乗】ピュアEVか“航続距離安心保険”付きかで悩める…青山尚暉

試乗記 輸入車
BMW・i3
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本来の姿はピュアEVであるBMW『i3』。しかし日本での販売比率約80%を占めるのが、EVの499万円に対して546万円というプライスタグを付ける「レンジエクステンダー」だ。

レンジエクステンダーは18.8kWhのリチウムイオンバッテリー、170ps、25.5kg-mを発生する電気モーターに加え、発電用としてBMWモーターサイクル用の2気筒4バルブ647cc、34ps、5.6kg-mユニットをリヤに搭載(燃料タンクは9リットル)する。

その結果、実航続距離はEV+100キロ程度伸びる。走り方、条件によっては約300キロの走行が可能という。

さらにバッテリー残量が75%を切ると、任意にエンジンを始動可能。バッテリー残量が6.5%を切ると自動的にエンジンが始動する。

“航続距離安心保険”が付いたレンジエクステンダーはEVよりエンジンなどの追加でリヤ部分で130kgの重量増となるため、リヤヘビーに対処すべくリヤタイヤのみフロントの155/70R19より太い175/70R19サイズが装着される。

しかし、その130kgの重量増はいい方向に作用しているようだ。モーターによる加速性能はEVよりわずかにマイルドになるものの、それでも怖いほど速いことに変わりはなく、しかもEVよりキビキビしすぎる感じのある操縦性もまたマイルドかつ扱いやすくなり、乗り心地もよりフラットでしっとり重厚になる。

EV、レンジエクステンダーを問わず、山道で素晴らしく低重心かつダイレクト感ある操縦性、フットワークを披露してくれるのはさすがBMWの本性と言えるが、155&175/70R19サイズのエコタイヤのふんばり感、接地感もまた想定外に高く、アクセルオフによる強烈な減速Gを使いこなし、メリハリあるスポーティーなドライビングダイナミクスを目いっぱい楽しめるのだからたまらない。i3はサスティナブルなモビリティであっても「駆けぬける歓び」を決して忘れていないEV、レンジエクステンダーなのである。

レンジエクステンダーの場合、エンジンが始動しても、都会の騒がしさの中ではまず気にならない(静かな森の中や深夜の住宅街などでは遠くで工事をしているような音が耳に届くが)。気がついたら始動、停止していた…そんな感じである。

レンジエクステンダーの航続可能距離はメーター左下のレンジエクステンダーによる航続可能距離と、右下のバッテリー電力による航続可能距離を足せばよい。EVより「駆けぬける歓び」を味わう精神的(航続可能距離的)余裕はずっと高まるというわけだ。実際、現時点でレンジエクステンダーを選ぶユーザーは80%に達するという(あくまで日本での話で、欧州ではEV比率が高い)。13年度基準の補助金がEVより35万円も多く、実質的な価格差が12万円になるところもポイントだ。

そうそう、全長4010mmのボディーサイズにして室内空間は実にゆったりしているが、荷室は開口部地上高75cm、幅102cm、奥行き60.5cmと意外なほどスクエアで広い。2~3人家族なら、宿泊用の荷物を詰め込むにも無理はない。

ナビはもちろん、リヤビューカメラ、iコネクテッドドライブスタンダード、衝突回避・軽減ブレーキ、車両接近通報装置など実用&安全装備も充実している。

もちろん、i3はその静かでフラットな走行感覚から愛犬とドライブするのにも悪くない。ただ、バックドア側から犬自身で飛び乗らせるには開口部地上高が高すぎる。中小型犬なら抱いた状態で後席へ(BMWには純正犬用シートベルトがある)。中大型犬はまず観音開きドアから段差のないフロアに乗せ、後席でくつろがせてあげるといいだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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