トヨタ紡織は、シートカバー内にウレタンの原料を注入し、発泡させて成形する「表皮一体発泡工法」をはじめ、樹脂素材採用による薄型技術が評価され同社として初めて欧州車に採用されたBMW『i3』用シートなどを出展。精密加工技術による匠の技を披露した。
「表皮一体発泡工法」とは、金型にセットしたシートカバーの中にウレタンの原料を注入し、発泡させて成形するもので、身体の曲線にあわせた理想的なシート凹断面形状を実現すると共に、高度な乗り心地とデザインを両立できるのが特徴。さらに、スリムかつ洗練されたシートデザインで高級感を演出できる。これは2013年5月に発表されたレクサスの新型『IS』F SPORT専用シートとしても採用された。
製品統括センター車室空間企画室 室長の古田雅子氏によれば「通常のシートはあらかじめ形作られた発泡ウレタンの上にシートカバーのように表皮をかぶせる。これだとピンで留めたとはいえ、隙間を完全に解消することはできない。表皮一体発泡工法を使うと表皮の隅々までウレタンが行き渡り、フィット感でも乗り心地でも優れた結果を出すことができる」と説明。これにより、IS F SPORTのスポーティな走りから生じる、旋回時にかかる重力加速度から方や腰をしっかりとホールドできるという。
会場にはIS F SPORTに採用の本革シートが置かれ、実際にその座り心地を体感することができた。また、同じ工法で作られたGAZOOレーシングの「GRMN 86 Concept」で採用されたスポーツシートも展示されていた。
BMW i3に採用された樹脂素材シートは、骨格材に通常の鉄ではなく樹脂を採用することで、軽量化と同時に全体を30~40mmほど薄型化できることに特徴がある。表皮のレザーやファブリックの選定はBMW側で行ったということだが、シート自体の設計から評価まで開発作業はトヨタ紡織がすべて行ったという。
一見するとこの薄さから乗り心地が悪いのではないかという懸念もあったが、先日i3を試乗した限りでは、そういった印象はまるでない。i3のシェルがカーボンファイバーでできている相乗効果もあると思われるが、同社が欧州車に採用された実績は高く評価できるものと言える。