【インタビュー】「GARMIN HUDは安全意識の高い日本にマッチする」…トニー・アンGARMINマーケティングディレクター

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GARMINセールス&マーケティング部門のディレクター、トニー・アン氏
GARMINセールス&マーケティング部門のディレクター、トニー・アン氏 全 11 枚 拡大写真

GARMINは車載ヘッドアップディスプレイ『GARMIN HUD日本版』を6月25日から、全国のApple Storeを始め日本国内での販売を開始すると発表した。販売予定価格は2万186円(税別)。

日本仕様では、キャンバスマップルのiPhone向けのナビアプリ『マップルナビ for HUD』(GARMIN HUD購入者は無償で使用可能)と連携し、HUD本体の反射レンズに次に曲がる方向や目的地への到着予定時刻など5つの情報を映し出すことができる。

GARMINセールス&マーケティング部門のディレクター、トニー・アン氏はレスポンスのインタビューに答え、「HUDは安全性を高める効果があり、安全意識が高い日本市場にあったユニークな商品と考えている」と日本市場での狙いを語る。

◆航空、マリン、アウトドア、フィットネス、自動車の5分野にソリューションを提供

----:GARMINといえばPNDで世界のトレンドをつくったブランドだが、PND市場が縮小していく中での、GARMINの成長戦略は。

アン氏(以下:敬称略):PNDの世界市場は縮小しているが、GARMINのシェアは逆にどんどん上がっている。GARMINのPNDの世界シェアは40%、なかでもアメリカ、台湾では80%に達している。これは競合他社がPND市場から相次いで撤退していったことで、相対的にGARMINのシェアが上がっているかたちだ。

確かにPNDの市場は縮小しているし、低価格化も進んでいるためマージンも減っている。しかし、GARMINは航空、マリン、アウトドア、フィットネス、自動車の5つの分野に、それぞれ異なるソリューションを提供しており、GARMIN全体の収益は増加している。さらに我々GARMINは、その5つの分野でリーダーになることをミッションとしている。

----:競合他社が市場から撤退していった背景のひとつとしてPNDの低価格化があるが、GARMINとして今後、再びPNDを付加価値のある市場にしていこうという考えはあるのか。

アン:2つのアプローチを同時に進めることになる。ひとつは最新機能を盛り込んだハイエンドモデルの継続的な開発。もうひとつはエントリーモデルでアグレッシブな価格設定によるシェアのさらなる拡大。我々は他社のようにPND市場から撤退するのではなく、やはり多くのお客様にPNDをお使い頂けるように引き続き開発を行っていく。

----:スマートフォンのナビアプリを利用する人が増えている中で、PNDの市場性をどうみるか。

アン:我々はスマホとPNDの2つの異なる市場が存在すると考えている。40歳以上の人たちはスマホをあまり使わずに、ナビはやはり使いやすいPNDを選択している。一方、若者はスマホのアプリでナビを利用する人が今後も増えていくだろう。そこで我々はこの2つの異なる市場にそれぞれに応じたソリューションを提供することを考えている。PNDはその品ぞろえを今後も充実させていく。そしてスマホユーザー向けには新しいソリューションとしてHUDを投入することにした。重要なことはこの2つの市場向けにGARMINが製品をすでに用意しているということだ。

◆PNDとは異なる思想で開発されたHUD

----:GARMIN HUD日本版の商品コンセプトは。

アン:“シンプル”というのが重要なメッセージだ。運転者がどのような情報が必要なのか我々は長い時間をかけて議論した。最も重要な情報として、次の方向転換までの距離、目的地への到着予定時刻、現在の走行速度、走行車線案内、交差点での曲がる方向―この5つを、グラスコックピットからの発想によって表示するようにした。

だからPNDとはコンセプトが異なっている。HUDのコンセプトは、高級車にしか装備されていないヘッドアップディスプレイ機能をシンプルな表示にした上で、2万円台の低価格で、しかもアフターマーケットで提供することだ。またHUDは安全性を高める効果があり、安全意識が高い日本市場にあったユニークな商品と考えている。

----:すでにスマホのナビアプリを利用している人たちに、どのようにHUDをアピールしていくか。

アン:一般のスマホのナビアプリを使用中に着信があると画面が切り替わってしまうが、HUDであれば着信時でも次に曲がる場所の指示などが表示されたままになっている(※)。しかもシンプルな画面表示にしているので、視線移動も小さくより安全に運転できる。そこれこそが我々のセールスポイントだと考えている。

またスマホのナビアプリでGPSの信号を受ける時に電池をかなり消費する。このためHUDの電源コードにはMFi認証を受けたiPhone充電用USBコネクターを備えているので、電池切れの心配もない。

※日本版の仕様では、通話終了後もしくは電話の相手が着信を中止した場合に、自動的にアプリが復帰して再表示する。

HUDとアプリのバンドルでコストメリット出す

----:HUDは現時点でiPhoneのみの対応だが。

アン:世界的にはAndroidのシェアが高いが、Apple製品のユーザーは新しいテクノロジー好きとGARMINは考えている。HUDも新しい技術なので、iPhoneユーザーに気に入ってもらえると思うので、まずはiPhoneユーザーに使ってもらうことで、HUDの認知度を高めていこうと考えている。

----:HUDはGARMIN製品の従来の販売ルートであるカー用品店チェーンに加えて、Apple Storeでも販売を開始する狙いは。

アン:HUDを車のアクセサリーとみるか、スマホのアクセサリーとしてとらえるか、国や地域、人によっても異なる。例えばドイツではドイツテレコムがスマホの販売促進ツールとしてHUDを無料または半額で提供している。インドネシアやインドではスズキが新車購入者にHUDをプレゼントするキャンペーンを行っている。またApple StoreではHUDはiPhoneのアクセサリーだ。日本では従来のカー用品店チェーンに加えて、Apple Storeでも販売することでブランディングの相乗効果を期待している。

他国ではHUDとナビアプリは別々で販売しているが、日本ではHUDを購入すればキャンバスマップルのナビアプリが無償で使用できるようになっている。しかもこのナビアプリは2年間無料で地図更新ができるスペシャルサポートもついている。

◆航空機器のノウハウを車載HUDにも活用

----:日本でHUDのナビアプリをGARMINオリジナルではなくキャンバスマップル社のものを選んだ理由は。

アン:海外では世界のGARMINとして認知されているのでアプリの仕様、マーケティングの仕方ともに良くわかっているが、日本のナビ市場は独特だ。そこで日本市場をよくわかっているディストリビューターのいいよねっと社と協議してキャンバスマップルのアプリを採用する方が良いと判断した。

----:実際に試乗して使ってみるとHUDは表示が明るいだけでなく視野角が広く、視認性が非常に高いという印象を受けた。

アン:HUDの一番のポイントは、ナビの情報を映し出すコンバイナー(反射レンズ)にGARMIN独自の技術を使っているということ。輝度7700cm/msのパネルを使っているので、真昼でもはっきりと見やすい。GARMINの液晶技術はすべて自社開発しており、長年の技術を積み重ねたものだ。GARMINは航空機やマリンといった太陽の光がまぶしく差し込む環境にも耐えうる製品を提供しており、そうした技術をHUDに盛り込んでいる。またイメージセンサーによって昼間は明るく、夜間は輝度を落として自動表示するようにもなっている。

----:スマホと連係していることで道案内の中にオンライン情報も入れられると思うが。

アン:GARMINオリジナルのアプリでは、すでに渋滞情報やスピードカメラ位置などを知らせるようになっている。日本では次のステップとしてこうした機能も盛り込まれることになるだろう。

《小松哲也》

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