ULA、純米国産ロケットエンジン開発を計画

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打ち上げ前のAtlas Vロケット第1段尾部、RD-180エンジンが見えている。
打ち上げ前のAtlas Vロケット第1段尾部、RD-180エンジンが見えている。 全 1 枚 拡大写真

6月16日、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、複数のアメリカの企業と次世代の液体酸素/炭化水素を推進剤とするロケット第1段エンジンのコンセプト調査に関する契約で合意したと発表した。

新型エンジンは、現在ULAが運用するアメリカの主力ロケットのひとつ、アトラス Vロケットの第1段エンジン、「RD-180」の代替となるものだ。

ULAはアトラス Vロケットでこれまで防衛衛星から、NASAの火星探査機「MAVEN」など46回の打ち上げを全て成功させており、米国の政府系衛星打ち上げにとって重要なロケットとなっている。

現在、NASAが国際宇宙ステーション(ISS)への有人商業輸送機開発を進めているが、候補となる3企業の輸送機のうち、ボーイングのCST-100宇宙船、シエラ・ネバダのドリームチェイサー宇宙船のいずれもアトラス Vロケットへ搭載される予定だ。国際宇宙ステーションへの商業補給船を運用するオービタル・サイエンシズも、2024年までのISS運用延長に伴う補給業務拡大をにらみ、現行のロケットエンジンからRD-180の採用へ乗り換えを検討している。

RD-180エンジンはロシア企業NPOエネゴマシュが生産し、同社とプラット&ホイットニーの合弁企業RD AMROSSを通じて供給されている。米政府系の重要な打ち上げを担う主力ロケットのエンジンがロシア製であることに対し、ISSへの商業貨物輸送機ドラゴン補給船を開発・運用するをスペース X社を急先鋒とした批判が起きていた。また、ウクライナ情勢を原因とする米露の関係を踏まえ、5月にはロシアのドミートリ・ロゴージン副首相がロシアからのエンジン供給停止に言及するなどエンジンの供給不安が懸念されていた。

ULAは現在、16基のRD-180エンジンを保有している。新たなエンジンは、2019年までの初打ち上げを目指すとされている。ULAとの契約に合意し、新型エンジンの供給元になる可能性のある企業の名前やその数は明らかにされていないが、精度の高い大型のロケットエンジンを製造できる技術を持つ企業は多くない。新型液体酸素/ケロシンエンジンの開発を目指しているエアロジェット・ロケットダインやオービタル・サイエンシズの名前が挙がっているという。ULAは2014年の第4四半期までに、エンジンサプライヤーと新型エンジンのコンセプトを決定するとしている。

同時に、RD AMROSSとの関係も継続し、RD-180エンジンを長期的に供給する体制づくりに向けた交渉を行うとしている。エンジンの改良や米国内での生産を視野に入れた可能性について話し合うとのことだ。

ULAは新型エンジン開発と初打ち上げを2019年までとしているが、米国防総省がRD-180エンジンの供給停止の影響を検討した委員会の報告書によれば、新型エンジンを開発したとしても、相当の時間がかかり、初飛行は2020年代になるとしている。

《秋山 文野》

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