幻の「京浜急行線」高架橋、再開発で消滅か

鉄道 企業動向
品川駅の北側に放置されている、幻の「京浜急行線」の高架橋。新駅の整備を含む再開発プロジェクトの進ちょくに伴い、そう遠くない時期に撤去されるとみられる。
品川駅の北側に放置されている、幻の「京浜急行線」の高架橋。新駅の整備を含む再開発プロジェクトの進ちょくに伴い、そう遠くない時期に撤去されるとみられる。 全 5 枚 拡大写真

JR東日本は田町~品川間(東京都港区)で、新駅の設置を含む再開発プロジェクトを進めている。車両基地の集約により創出された再開発用地の工事がまもなく本格化する見込みで、戦前に建設された幻の鉄道路線の高架橋も撤去される可能性が高そうだ。

田町~品川間のJR線は、東側に東海道新幹線と東海道線(下り)、西側に山手線と京浜東北線、東海道線(上り)を配置し、東側と西側の線路に挟まれる格好で車両基地が設けられている。このため、この区間の鉄道敷地は人の胃のように大きく膨らんでいる。

JR東日本の計画によると、東北縦貫線(上野東京ライン)の整備にあわせて車両基地の規模を半分程度に縮小し、東側に集約。山手・京浜東北・東海道(上り)線も新しい車両基地に沿って東側に移設し、山手・京浜東北線には新駅を設ける。これにより創出された西側の敷地(約13ha)を再開発する。

西側の敷地内には現在、旧車両基地の留置線や車庫のほか、「京浜急行線」用として建設されながら実際は一度も使われることがなかった高架橋が残っている。京浜急行線といっても京浜急行電鉄(京急)ではない。現在の京浜東北線快速電車に相当する、幻の運行系統のことだ。

現在の田町~品川間は、車両基地の留置線や新幹線、地下トンネルの横須賀線を除くと線路が6本(3複線)敷設されており、山手線と京浜東北線、東海道線がそれぞれ2本(複線)ずつ使用している。しかし戦前の計画では、現在の京浜東北線に相当する2線を山手線と京浜緩行線(現在の京浜東北線各駅停車に相当)が共用。現在の山手線に相当する2線は、横須賀線と京浜急行線が使用する予定になっていた。

戦前はこの計画に基づき線路の増設工事が進められ、浜松町~田町間には横須賀線・京浜急行線の線路が山手線(外回り)・京浜緩行線(南行)の線路をまたぐためのコンクリートボックス橋が建設された。一方、田町~品川間でも横須賀・京浜急行線の高架橋が部分的に建設された。

しかし、戦時体制に入ると増設計画は中断。戦後になって工事は再開されたが、このときは山手線と京浜東北線の走行線路を分離するための増設計画に変更された。この結果、横須賀線は東海道線と線路を共用(後に地下化して東海道線から分離)することになり、京浜急行線は計画そのものが消滅。浜松町~田町間のコンクリートボックス橋と田町~品川間の高架橋は使われることなく放置された。

ボックス橋は東海道新幹線の建設時に撤去されたが、田町~品川間の高架橋はその後も残り続け、現在に至っている。しかし今年6月、桁下の空間を仕切る壁が撤去されており、解体に向けて本格的に動き出したようである。そう遠くない時期、京浜急行線計画の名残が完全に消滅することになりそうだ。

《草町義和》

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