宇宙旅行から宇宙葬、月レースまで…縮まる民間と宇宙の距離

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チームHAKUTOより、ローバー試作機と金田政太氏
チームHAKUTOより、ローバー試作機と金田政太氏 全 6 枚 拡大写真

2014年6月27日、日本で宇宙葬サービスを手掛けるエリジウムスペース、宇宙旅行ヴァージンギャラクティック代理店のクラブツーリズムスペースツアーズ、Google賞金月レースに日本から参加するチームHAKUTOによるトークイベントが開催された。

ついに宇宙船の本格始動なるか

今年は、世界初の弾道宇宙旅行向け宇宙船「スペースシップ ワン」初飛行が行われた2004年からちょうど10年の節目の年。ヴァージンギャラクティック社による後継機「スペースシップ ツー」での商用サブオービタル宇宙旅行開始に向けて大詰めとなっている。毎年のように「今年こそは商用運行開始」といってきたと笑い話もあるが、毎年秋に開催される初期の予約客向けのイベントを今年は休み、商用運行の合図となるリチャード・ブランソン会長のフライトに向け全力投球するという。

日本でヴァージンギャラクティック社の宇宙旅行を取り扱うクラブツーリズムは、2014年1月にクラブツーリズム・スペースツアーズを設立。代表に就任した浅川恵司氏は、JAXAと共同で宇宙旅行への日本人の意識調査を行った。クラブツーリズムに登録する国内20~70代の幅広い年齢層、1700人への調査によれば、「宇宙旅行に行ってみたい」答えた人は全体では半数を越える57.3パーセントとなっており、肯定的な回答が多かったという。

600万円なら安い?

調査で「宇宙旅行はいくら以上だと“高い”と思うか」「宇宙旅行はいくら以上だと“安い”と思うか」と二つの質問を組み合わせて得た宇宙旅行の適正価格は、およそ600万円。現在のヴァージンギャラクティックのスペースシップ ツーによるサブオービタル宇宙旅行は25万ドル(およそ2500万円)のため、4分の1ほどまで価格を下げることができれば、宇宙旅行の潜在力は大きいという。

2014年は、1964年、日本の海外旅行自由化から50年にあたる年だ。大卒初任給と比較するとハワイ旅行が現在の価値にして400万円程度、ヨーロッパ周遊旅行は700万円程度にあたる。宇宙旅行は、豪華な海外旅行と同程度と考えられるようだ。とはいえ、「宇宙ではどれくらい滞在したいか」の設問では「1日」が23.9パーセント、「2~3日」が38パーセントと大きな割合を占め、望んでいる宇宙旅行は5分間の弾道飛行よりは長く、地球を周回する軌道などを期待しているという。

宇宙葬の低価格化も

地球を周回する宇宙旅行の低価格化はまだすぐには実現しないようだが、人工衛星に乗って亡くなった人の遺灰が地球をめぐる宇宙葬の低価格化はすでにサービスが始まっている。1990ドル(およそ20万円)の価格で、1センチ立方のカプセルに故人の遺灰を入れ、超小型衛星に乗せて打ち上げるサービスを2013年に開始したエリジウム・スペースからは、設立者のトマ・シベCEOが来日。現在予約受付中の第1回の打ち上げは今年10月を予定していると語った。

遺灰を乗せた衛星は、他の人工衛星とともに相乗りの形でロケットに搭載される。他の衛星に影響を及ぼさないため、打ち上げ時に振動や熱で変質したりガスを出すなどの懸念のないものでなければ搭載できない。高温で焼かれた遺灰は、そうした変化が起きにくいため、宇宙葬は当面は遺灰に限られる。

エリジウムスペースのサービスでは、遺灰を乗せた衛星の軌道を専用のスマートフォンアプリで表示する機能を持っており、家族や友人の頭上を通過する際にはお知らせする機能もある。トマ・シベCEOによれば、こうした機能などを通じて、故人の一部が地球の周りをまわって、いずれ衛星と共に地球の大気圏へ帰ってくることにロマンを感じるユーザーが多いという。

月面レースでの活躍に期待

2015年末までに、民間開発の月着陸船・ローバーによる月面走行の成果を競い合うGoogle ルナ X プライズ(GLXP)に日本から唯一参加する、「チーム HAKUTO」からは、プロモーション担当の金田政太氏が参加。参加チームが一堂に会するサミットの様子を紹介した。

GLXP開始当初は29あった参加チームは、撤退や合併などにより現在は20チーム以下となっているとのことで、競争の厳しさを感じさせる。今年秋には、着陸や月走行などに有望な技術を持つチームに資金を供与する中間賞の表彰が行われる。中間賞ノミネートの5チームに入ったチームHAKUTOは、「ベスト5と呼べる」と日本の技術に自信を見せた。

旅行や宇宙葬と異なり、月レースには一般から自由に参加できるわけではないが、活動紹介やイベント、ローバーのデモンストレーションなどを通じて多くの人の応援を受けている。「応援という形で、みなさんも月ローバーに乗っていると思ってほしい」と金田氏は締めくくった。

《秋山 文野》

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