なぜ?テスラ・BYD・ハイブリッドを選ぶのか、日本の BEV ユーザーのリアル…国際経済研究所 小林浩氏[インタビュー]

なぜ?テスラ・BYD・ハイブリッドを選ぶのか、日本の BEV ユーザーのリアル…国際経済研究所 小林浩氏[インタビュー]
なぜ?テスラ・BYD・ハイブリッドを選ぶのか、日本の BEV ユーザーのリアル…国際経済研究所 小林浩氏[インタビュー]全 5 枚

日本の新車市場における BEV(バッテリー EV)のシェアは、世界の潮流から見るとなお低い。だが、その実態を見てみると、それぞれのBEVブランドが異なる支持層を獲得しながら地場を固めている様子が見えてくる。国際経済研究所 特任研究員の小林浩氏に、同氏が手がけた大規模定量調査の結果をもとに話を聞いた。

小林氏は、7 月 24 日に開催されるオンラインセミナー「テスラを買う人、BYD を選ぶ人、ハイブリッドに乗り続ける人~なぜその選択なのか?定量データで読み解く日本の BEV ユーザーのリアル」に登壇し、本内容について詳説する。セミナーの詳細はこちらから。

1 万人の基礎調査と 736 人の深掘り調査

今回の調査は二段構えで設計されている。基礎調査では、20 歳から 69 歳までの車所有者 1 万人を無作為抽出して分析した。実際には 25 万人規模に配信した中から、統計的に問題のない 1万人を抽出する形を取っている。対象条件は「月 1 回以上運転し、かつ自分名義の新車で購入した車を所有している人」である。

この基礎調査の生データを国勢調査の性・年代別分布に合わせて補正して分析した上で、併せて深掘り調査の対象者を抽出した。深掘り調査は、テスラユーザー88 名、BYD ユーザー30名、国内メーカーBEV ユーザー206 名、海外メーカーBEV ユーザー103 名、PHEV ユーザー103 名、HEV ユーザー103 名、ガソリン車ユーザー103 名の合計 736 名を対象に、より詳細な意識・行動を聴取している。

具体的には、深掘り調査の原則条件は「週 1 回以上運転」だが、BYD ユーザーに限り、サンプル数の都合で「月 1 回以上運転」まで緩和した。また、原則として「自分名義で新車を購入し使用している人」が対象だが、BYD については同居家族(配偶者・親)名義やサブスクリプション・リース利用者も数名含めている。

BEV ユーザーの特徴 - 高所得・若年層・技術系会社員(テスラ)

今回の基礎調査において、BEV の出現率は 2.1%だった。年代別に見ると 20 代が 4.5%と高く、将来の市場動向を見る上で注視すべき層であると小林氏は指摘する。

ブランド認知率については、テスラが 57.9%、BYD が 32.1%という結果だった。両ブランドはなお認知拡大の途上にあるといえる。

ユーザー属性では、性別では男性が車ユーザー全体の 61.2%に対し BEV ユーザー全体では 72.6%、テスラユーザーでは 75.0%を占めた。年代構成も 20 代・30 代の比率が BEV ユーザーで高く、テスラユーザーではさらにその傾向が強い。

職業構成では興味深い差異が見られた。BEV ユーザー全体では経営者・役員、自営業・自由業の比率が高めなのに対し、テスラユーザーは技術系会社員が 28.7%と突出して多い。小林氏はこの結果を、過去に実施したインタビューの傾向と結びつけて解説する。

「テスラのオーナーは、前回のデプスインタビューを振り返っても、新しいもの好き、メカ好き、ガジェット好き、デジタル好きな方が多い印象があります」

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世帯年収については、BEV ユーザー全体で 1000 万円以上の比率が 31.3%(車ユーザー全体では17.0%)に達し、テスラユーザーではさらに 36.5%まで高まる(「わからない/答えたくない」を除いた比率)。小林氏は「これは想定内というか、イメージ通りという印象を持ちました」と述べた。

イノベーター理論で見る BEV ユーザーの先進性

調査では、5 項目(新商品への関心、情報収集、試用の早さ、発信意欲、未知のブランドに対する柔軟性)を点数化し、対象者をイノベーター理論の「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の 5 段階に分類する独自開発の手法を採用した。理論値との乖離が小さいことから、この分類方法は妥当性が高いと小林氏は判断している。

その結果、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた「先進層」の比率は、BEV ユーザー全体で 46.7%に達した。車ユーザー全体の 17.6%と比べて顕著に高い水準である。テスラユーザーではこの先進層比率がさらに 64.1%まで上昇する。

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ただし小林氏は、この数字を単純な「先進層への偏り」と捉えるのではなく、別の角度からも解釈すべきだと強調する。

「逆の見方も出来ると思います。つまり半数以上は先進層でない人が BEV を買っているとも言えるわけです」

さらに、BEV 市場の伸び悩みを「アーリーアダプターの買い替えが一巡したから売れない」と単純に説明する論調に対しても、小林氏は異論を述べた。

「車の買い替えのタイミングは一人ひとり全然違いますし、車を一度買ったら 8~10 年程度は乗るので、これからもアーリーアダプターがどんどん買い替えのタイミングを迎えることになります。つまり、もうアーリーアダプターの需要をほぼ取り込んでしまったということはないはずです」

なぜ BEV を選んだのか

乗り換え前のパワートレインを見ると、国内メーカー BEV ユーザーは HEV からの乗り換えが 36.1%と他のユーザーより多い一方、テスラ(20.7%)や BYD(21.4%)のユーザーは HEV からの乗り換えは少なめだ。

小林氏はこの違いについて、「国内でハイブリッドが市民権を得てから何年も経って、いわゆるコモディティなので、こうなるわけですが、一方テスラや BYD のオーナーは、HEV を経ずにガソリン車などから来る人が多い」と説明した。

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BEVの選択理由の上位は、補助金(56.6%)、燃料代の低下(56.1%)、走行性能・加速性の良さ(46.9%)、静粛性(45.1%)、ガソリンスタンドに行く必要がないこと(43.7%)と続く。

環境負荷の低さを理由とする人は 33.0%に留まり、小林氏は「環境負荷が少ないという動機よりも、コストや節約意識に関係する動機の方が強い」と分析した。コスト合理性が環境意識よりも強い動機になっているという指摘は、日本の BEV ユーザー像を捉える上で重要な手がかりだろう。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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