【国産 ミドルSUV 比較】三菱 アウトランダーPHEV & 日産 エクストレイル…スペックから見る“今”のSUV

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三菱アウトランダーPHEVと日産エクストレイル
三菱アウトランダーPHEVと日産エクストレイル 全 32 枚 拡大写真

国内の自動車販売ランキング上位をハイブリッド車と軽自動車が独占するようになり久しい。2014年上半期の販売トップ10は、7台が軽自動車、残り3台がハイブリッド車と、ガソリン高騰の煽りもあって燃費が良くコンパクトなクルマが好まれる傾向にあるのは当然の流れだろう。

一方で、トップ10には漏れるもののミニバンやSUVといった、使い勝手やライフスタイルで選ばれるクルマもまだまだ元気だ。特にSUVは、世界的なトレンドであるだけでなく、様々な価値観をクロスオーバーする現代の若者に訴求するアイコンとして各メーカーが力を注ぐモデルでもある。今回はそんな中でも「都会的なスタイル」と「本格派性能」を兼ね備える三菱『アウトランダーPHEV』と日産『エクストレイル』、2台のミドルサイズSUVをピックアップ。そのスペックとショートインプレッションからSUVの今を紐解く。

先進のプラグインハイブリッドEV…三菱 アウトランダーPHEV

アウトランダーPHEVは、三菱のEV技術が盛り込まれたプラグインハイブリッドシステムを搭載する。2リットル4気筒エンジンに12kWhの大容量リチウムイオン電池とモーターを組み合わせ、最大60.2kmもの距離をエンジンを掛けずに走行できる先進のSUVだ。また、ガソリン車もラインナップするアウトランダーだが、今や販売の過半数がPHEVだと言い、SUVの新しい価値を創造したモデルと言えるだろう。

無骨なクロカン系から都会派スタイルへ…日産 エクストレイル

雪山を駆け抜けたり、波に濡れたサーフボードを荒々しく荷室に突っ込んだり、まさにエクストリームな演出のCMが今も印象に残るエクストレイルだが、2013年に登場した3代目で大きくイメージチェンジ。それまでの無骨で角張ったクロカン系デザインから流麗な都会派スタイルへと変貌した。とはいえ「ALL-MODE 4×4i」をはじめ、これまで培ったタフなSUV性能は健在。アウトランダーPHEVのような「飛び道具」はないものの、質実剛健なSUVスタイルを確立している。

ボディサイズ

アウトランダーPHEV は、全長4655×全幅1800×全高1680mm、ホイールベースは2670mm。車重は1830kg。(G Premium Packageを参照)

一方、エクストレイルのボディサイズは、全長4640×全幅1820×全高1715mm、ホイールベースは2705mm。車重は1500kgだ。(20X“エマージェンシーブレーキ パッケージ”を参照)

全長はアウトランダーPHEVの方が15mm長いものの、全幅は20mm短く、全高は35mm低い。アウトランダーPHEVは水平基調デザインのせいもあり大柄な印象だが、サイズに大きな違いは見られない。ただ大容量バッテリーを搭載する分、重量には300kgの差が出ている。

荷室容量はそれぞれカタログ単位が異なるため単純比較はできないが、アウトランダーPHEVはEV用パワートレインを荷室下に搭載するものの、ガソリン車とほぼ同じ荷室を確保しており、両車ほぼ互角。ただし、3列シートを選択できるエクストレイルに対し、上記理由からアウトランダーPHEVは2列のみの設定となる。このあたりは使い方によって選択を考えるべきだろう。

パワートレイン

アウトランダーPHEVは、最高出力118ps、最大トルク186Nmの2.0リットル 4気筒 DOHC MIVECガソリンエンジンに、フロントに82ps/137Nm、リアに82ps/195Nmのモーターを組み合わせる、独自の電気駆動「ツインモーター4WD」だ。走りの基本はモーターによる駆動で、エンジンは発電と駆動、両方に用いられるのが特徴。これにより滑らかかつピュアEVと変わらぬトルクフルな走りを楽しめる。これに、車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用し、高い走行安定性を実現するだけでなく、ワインディングなどでのスポーティでクイックなハンドリングも可能としている。

エクストレイルは、全グレードで147ps/207Nmの2.0リットル 直噴MR20DDエンジンを搭載する。シリンダー内へ燃料を直接噴射することにより、低燃費と高トルクを両立するのが特徴だ。エンジン数値で見るとほぼ互角だが、モーターが加わる分、数値的にはアウトランダーPHEVが上を行く。とはいえ、大柄ながら1500kgに抑えた比較的軽量なボディを操るには必要十分なスペックだといえる。4WDモデルでは、コンピューターが走行条件に応じて、前後トルク配分を100:0から約50:50に切り替える「ALL MODE 4×4i」、ドライバーの意図するラインを予測し、自動的に前後トルク配分を行う「ヨーモーメントコントロール」を搭載し、悪路走破性も抜かりは無い。

燃費(JC08モード)

三菱 アウトランダーPHEV 18.6km/リットル(ハイブリッド走行時)
日産 エクストレイル 20X 16.0km/リットル

アウトランダーPHEVは、バッテリー残量がある場合はEVモードで走行するため、上記はエンジンが掛かった状態での比較となる。アウトランダーPHEVは、EV走行による航続距離60.2kmを誇り、これを組み合わせた総合燃費では50km/リットルを超えることも可能だ。

熱効率を高めた直噴MR20DDエンジンに新型のエクストロニックCVTを組み合わせ、アイドリングストップも採用したエクストレイルは、ガソリン車のMクラスSUVで燃費トップを達成しており、優秀な数字だと言える。

主要装備

アウトランダー PHEVならではの装備は、やはりプラグインハイブリッドEVシステムだ。減速時は、モーターを発電機として働かせることで、回収した電気を駆動用バッテリーに充電。ブレーキペダルを踏み込むと回生ブレーキを強くする制御も採用し、積極的に減速エネルギーを回収することができる。回生ブレーキの強弱をセレクターレバーで3段階、パドル式回生レベルセレクターで6段階に調節が可能で、これを活用することでスポーツカーのようなダイレクトなアクセルワークも楽しむことができる。

安全装備としては、「衝突被害軽減ブレーキシステム」や「車線逸脱警報システム」、「レーダークルーズコントロールシステム」を兼ね備える(G Safety Package、G Navi Package、G Premium Packageに標準装備)。

また、メーカーオプションの車載コンセント「100V AC電源(1500W)」は、アウトドアや非常時に役立つもの。バッテリーのみで一般家庭の電力消費量の約1日分相当、エンジン発電を行えば約10日分相当をまかなうことができるというのは他にない大きなメリットだ。

エクストレイルの利点は7人乗車が可能な3列シート仕様が設定される点。さらに、汚れや水に強い防水仕様のシートとフロアは、初代から引き継がれる同車の特徴的装備だ。ラゲッジボードも防水とし、荷室の間仕切りも自在に行える。

安全面では、「エマージェンシーブレーキ」「踏み間違い衝突防止アシスト」「LDW(車線逸脱警報)」「進入禁止標識検知」などをセットした"エマージェンシーブレーキ パッケージ"をラインナップ。インテリジェントパーキングアシスト付きのアラウンドビューモニターもオプションし、取り回しに気を配っている。

また、シャシー制御機能として、上下の動きに対応する「アクティブライドコントロール」や、CVTのギヤ比制御でエンジンブレーキを付加する「アクティブエンジンブレーキ」を備えることで、悪路やコーナリング時の安定性を保ち、ドライバーの疲労軽減にも配慮している。さらに、本格SUVならではの機能として4WDモデルには滑りやすい路面を下るときに、ペダル操作のみで車速をコントロールできる「アドバンスド・ヒル・ディセントコントロール」や、「ヒルスタートアシスト」も採用する。

価格

エクストレイルは2WDをラインナップすることもあり、エントリー価格は抑えられている。最廉価の「20X 2WD 2列シート」が231万3360円。上記で比較した「20X"エマージェンシーブレーキ パッケージ" 4WD」は2列シートが259万9560円、3列シートが267万1920円。最上位で4WDにのみ設定される「20X エクストリーマーX "エマージェンシーブレーキ パッケージ" 」は2列が280万4760円、3列が287万7120円となっている。

アウトランダーPHEVは、最廉価モデル「E」が332万4000円、最上位モデル「G Premium Package」が429万7000円。高価と言われる大容量リチウムイオンバッテリーを搭載することもあり額面では比較的高価だが、平成26年度クリーンエネルギー自動車等導入補助金として、上限29万円の補助が受けられる。最廉価の「E」であれば約300万円、さらに免税の恩恵も受けることができるというメリットは大きい。

ショートインプレッション

参考までに今回、東京都内から埼玉県秩父周辺までの往復100km程度の中で、2台を乗り比べた。まずアウトランダーPHEVの走りはまさに「EVそのもの」であるという点。高速でも80km/h程度までモーターのみで走りきり、その加速感と静粛性は300万円~のSUVらしからぬ高級感を感じさせるものだった。また峠道での細かいハンドリングにもS-AWCが効き、スポーツコンパクト並みのキビキビと、かつ安定した走りをこなしたのが印象的だった。エクストレイルは、やはり4気筒ならではの「軽さ」が売りだ。CVTの制御はダイレクト感にはやや欠けるものの、クルージングマシンとしては高速、峠道ともにソツなくこなす優等生というイメージ。入門車としては必要十分なスペックだろう。両車それぞれが異なる魅力を持つ。

《宮崎壮人》

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