7月30日、企業のモビリティ活用に関するCIO調査「Accenture Mobility Insights Report 2014」が開催された。アクセンチュア デジタルコンサルティング本部モビリティサービス グループ統括丹羽雅彦氏は、モバイル機器を活用したビジネスにおけるポイントを講演の中で語った。
デジタル時代、企業ITに求められる新たな能力とは
「モビリティ価値を最大化させるために企業ITに求められる新たな能力~デザイン思考とオープンイノベーション」と題した講演で丹羽氏は、企業に求められる新たな能力としてモビリティ活用の重要性を説く。
2014年グローバルCEO調査での“今後12か月で最もリスクとして考えられるもの”に挙げられていたように、マーケットやテクノロジーの急激な変化が脅威となる現在、重要性を増していくのが“顧客体験”。こういった時代だからこそ、(1)デザイン思考(2)オープンイノベーションの二つの能力がキーワードとなる、と述べる。
丹羽氏いわく「デザイン能力=議論するよりも作ること」と定義できるという。
モバイルアプリ開発に携わるいま「(説明をするときに)最近はパワポを使わなくなっています。モバイルアプリは、アプリそのものを見て動かしながら議論する方がわかりやすい」と話す。
「実際に動かしてみないと(モバイル)サービスの出来は理解できない。企画に時間をかけず、プロトタイプを繰り返すことが重要」と指摘する。
さらにオープンイノベーションについては、「企業の枠を越え、知恵を結集することが重要。ARI(汎用性の高い機能を呼び出して利用するための手続き、データ形式を定めた規約)により他者に魅力的な環境を提供し、イノベーションを生み出すことが必至となる」と述べる。
モバイルアプリは“ビジネスとアートの接点” 融合目指しアプリ工房を設立
「業務で使うモバイルアプリケーション開発」をする際の心がけについては、モバイルアプリをつくるには業務を理解することのみならず、エンターテイメントも理解しなければならない、という。丹羽氏はこのことを “ビジネスとアートの接点”と表現する。
「業務で使うモビリティアプリケーション開発には、ビジネス課題と感性に訴えるUXの双方への知見が求められる」
ビジネス課題を考える際には、論理性・原因分析・業務、ビジネスへの深い理解、ビジネス設計が求められる。つまり一方感性に訴えるUXをつくるには感覚的・アイデア創出、デザインの持つ力を理解し、これをアプリで具現化するということだ。
ビジネス課題とUXに求められる力を融合するためのとりくみとして、同社が創設した「UX Studio」を例に取る。「UX Studio」にはモバイルUXデザイナーとアプリ開発者を一拠点に集約しているという。ここで「プロトタイプ開発から本番用アプリまで企業のデジタル化支援を目指している」という。
「UX Studio」では(1)ビジネス戦略をUXに転換(2)ユースケースの考察(3)ストーリーボードの考察(4)アプリの具現化(5)クライアントフィードバック、この5つの工程を経てモバイルアプリケーションがつくられるという。
(3)ストーリーボードの作成の過程では、手書き・絵コンテで作業され、そこではロジカルかどうか、よりも“カワイイかどうか”を気にしながら進められるのだという。
企業システムにおけるモバイルUI
「モバイルのUIデザインは業務プロセス設計そのもの。したがって、デザインする際には業務とユーザー特性の双方の理解が求められる」
ユーザーは普段からモバイルを楽しむ。ユーザーが企業ITよりも先に進んでいて、見た目、使い勝手に対する要求水準が高い、印象をうけているという。丹羽氏の肌感覚としては、モバイルになると、FacebookやTwitter、LINEの仕様と比較されたうえでのダメ出しをされることが多いという。
「広い画面をつかうWebでは画面に多くの情報を納めることができたが、狭い画面のスマホアプリは表示する情報を厳選しインタラクティブにしなければ使ってくれない。」
したがってアプリケーション開発の過程でも最後までUXデザイナーが介入・関与することが、当初プランした顧客体験を毀損することなくアプリに反映させるために重要、と指摘された。
同社は昨年買収したUX専門会社(Fjord社)を、今後重要となるユーザー・エクスペリエンスや、その一要素であるユーザー・インターフェースの中核部門として位置づけ、「グローバルで多くのクライアントにサービス提供している」という。今後も「UX Studio」などで、UXへの理解の高い人材を採用し、モビリティ活用に注力していく意向が示された。